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花見3

丘の上にのぼると、ちょうどテーブルがセッティングされたところだった。


ショーンとバッカスで椅子をテーブルの周りに並べている。


「この上に置いても大丈夫か?」


アーノルドに言われて三人は一斉にアーノルドとマリーの方を向いた。


そして、最敬礼する。


「畏まった挨拶は不要だ。バッカス殿、ショーン、それとトリトン嬢だな」


「はい。トリトン伯爵の娘、メイでございます」


メイが綺麗なお辞儀をする。


「顔は合わせたことがあるが、話すのは初めてだな。今日はよろしく頼む。それと……まさかショーンとこの場で顔を合わせるとは思わなかったよ」


「お久しぶりです、アーノルド様」


「久しぶりだな」


2人が顔見知りと知って、バッカスが口をはさむ。


「お二人はどういった………」


「ショーンとは同じ騎士団に所属していたのだ。私が王太子殿下の補佐官になるために騎士団を去ったあと、すぐに辞めたと聞いた。どこかの貴族の護衛になったとのことだったが、トリトン伯爵家だったのだな」


「はい。メイ様をお守りするために専属騎士となりました」


「優秀な騎士が辞めてしまったと私の後に団長になった者が嘆いていたよ」


「勿体ないお言葉です」


ショーンはそういうと椅子を並べてパラソルを立てた。



「アーノルド様のお持ちの物はこちらのテーブルに」


「わかった」


思ったより馴染みそうな雰囲気にマリーは安堵した。


「そういえばベデル様は何でこちらに?」


バッカスが椅子を引いてアーノルドに座るように促しながら聞いた。


ショーンはメイの椅子を引いて座らせた後、マリーの椅子も引いてくれたので会釈してそこに座る。


マリーから見て右にメイ、左にアーノルドが座っている。


四角いテーブルのため、向かいにショーンとバッカスが座った。


「私は馬できたよ。ほら、下の木の場所で待機している」


アーノルドの指差す先に立派な毛並みの白馬が大人しく佇んでいた。


「うわぁ……とても綺麗なお馬さんですね」


マリーが感嘆の声をあげる。


目がキラキラと輝いていて、その反応にアーノルドは驚いているようだ。



「マリーは馬、好きだよな」


バッカスが苦笑した。


「動物は全般好きなんだけど、馬は特に好きなのよねぇ」


「乗馬も出きるのか?」


アーノルドが聞く。


「はい!母の生家に行くと必ず乗馬をします」


「そうか。ならば後で我が愛馬に挨拶に行くか?」


「いいんですか!」


「もちろんだ」


アーノルドが優しく微笑んだので、マリーは少し驚いた。


眼鏡の再作に来たときはいつも無愛想だったので笑った顔を見たのは初めてだ。


綺麗に笑うんだな……と思った。


「ところでカータス様は?」


もう11時はまわっているが、姿が見えないため、メイが不思議そうに問う。


「先輩……じゃなかった。カータス様は時間厳守タイプよね。バッカス、何か聞いてる?」


「あっ!そういえば、午前中はどうしても抜けられない仕事があるから、午後から遅れて来るって行ってた。だから先に食べといてくれって」


「そうなの?じゃあカータス様の分は先に取り分けておかないと」


マリーが慌てるのでメイが笑った。


「残っていたらショーンが食べてしまうものね」


くすりと笑われてショーンが赤くなった。


「も、申し訳ありません。マリー殿のサンドイッチは美味しいものでつい……食べすぎてしまいます」


「ショーン様は食べっぷりがいいから、見ていて気持ちいいですよ」


マリーが笑った。


「マリー、悪いんだけど先に飲み物もらっていい?労働したら汗かいて喉からから」


「あれくらいでだらしないわね。マリー、用意なんてしなくていいわよ」


「なんでメイが決めるんだよ」


「メイ、意地悪言わないの。バッカスが好きなコーヒー用意してるんだけど……ホットで大丈夫?」


「えっ………冷たいのないの?」


バッカスが何とも言えない表情をした。


「朝方寒かったから、暖かい方がいいかな?と思って保冷ポットにいれてきちゃった」


そういいながら、マグカップにポットから熱いコーヒーを注いだ。


熱い証拠と言わんばかりに湯気がたっている。


「冷めるまで待つかなぁ………」


「水魔法である程度は冷やすこと出来るからちょっと待ってて」


バッカスが可哀想になり、とりあえず外から冷やして見ようと思ったときにアーノルドが


「バッカス殿、冷やせばいいのか?」


と聞いてきた。


「え………あ……はい」


バッカスが答えると、アーノルドはマリーの持つマグカップの上に手を被せて小さく詠唱した。


すると、アーノルドの手から小さな氷が現れてマグカップのなかに消えていった。


しばらくすると湯気が消える。


「グラッシス嬢、冷たくなってるかな?」


言われてマグカップに触れるとひんやりとしている。


「はい!とても冷たいです」


「それはよかった」


アーノルドはまた笑った。



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