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花見2

目的の丘の前で馬車は止まった。


「ショーン、バッカス!荷物運びお願いね」


メイが言うとショーンはすぐに、バッカスは嫌々馬車から降りて椅子やらパラソルやらを手に持った。


「これ、結構重いな」


「バッカスが風魔法で運んでくれたら楽なのに」


「メイ………俺が魔力のコントロール苦手だって知ってるだろう?荷物をあの丘の上にピンポイントで運ぶなんて無理だよ」


「だったら文句言わずに運びなさい。ショーンは貴方の倍は持ってるわよ」


ショーンを見るとパラソル、折り畳み式のテーブル1つと椅子3脚を軽々と持っている。


バッカスが持っているのは椅子3脚だ。


「あんな筋肉痛もりもり男と一緒にするな!」


「あら?本を運んだりしてるから筋力はあるんじゃなくて?」


「お前って本当にいい性格してるよな」


バッカスはため息をつくと椅子3脚を持って丘を登り始めた。


「私が持ってきた荷物は私が運ぶね」


マリーが料理の入ったバスケットを持つ。


「2つあるから往復するわ」


「私も持つわよ」


メイに言われてマリーは首を振る。


「結構重いから。それにメイは丘の上を平らにしないといけないでしょ?」


メイは土魔法が使えるため、ピクニックに行くとでこぼこしている土をまっすぐにならしてくれる。


「椅子とテーブル置く前にしないと」


「そうだけど………別にマリーが持たなくてもショーンが運ぶわよ」


「私が運ぶ方が早いから。ほら、ショーン様が丘の上にのぼりきってメイを待ってるわ」


丘の上を見ると両手が荷物で塞がったショーンが静かにこちらを見ていた。


「本当ね。じゃあちょっと行ってくるわ」


「こっちは任せて」


メイが丘の上へ登っていくのを確認してからバスケットを両手に抱えてマリーも丘を上ろうとした。


しかし………


「これを運べばいいのか?」


という声と同時に両手に抱えていたはずのバスケットが誰かに取られた。


「えっ……あ!」


視線を横にうつすとバスケットを持ったアーノルドがいた。


「グラッシス嬢、こんにちは」


「べ、ベデル様……こ、こんにちは」


突然のことにビックリしていると


「荷物はこれだけか?」


と聞いてくる。


「あと1つあります」


馬車に視線を移すと


「これか?」


と言いながらバスケットを片手にドリンクの入った入れ物も手に持った。


「それです……じゃなくて!私が持ちますから

!!」


侯爵家の人間に荷物持ちなんてさせられないと慌てて取りかえそうとしたが、簡単に躱されてしまった。


「私が運ぶから問題ない」


「そんなことさせられません!」


「私が侯爵家の人間だからか?」


マリーは大きく頷いた。


「わかっているなら返してください」


「身分の前に女性に荷物を持たせるなど騎士道に反することを私にさせるつもりか?」


アーノルドに言われてマリーは言葉に詰まった。


「私はこう見えて力には自信がある。私に運ばせてくれ」


こう言われてしまえばマリーは何も言い返せなくなってしまった。


「わかりました。よろしくお願いします」


「あの丘の上に運べばいいか?」


丘の上ではメイが魔法を使ってテーブルなどを設置しやすくしているところだった。


「はい」


「わかった」


マリーとアーノルドも丘の上に向かう。


「グラッシス嬢」


「なんですか?」


「今日はいつもみたいに髪を束ねていないのだな」


まさかアーノルドが髪型について何か言ってくるとは思ってなかったのでビックリしていると


「女性は髪型で随分と印象が変わるものだな」


と続けた。


「変……ですかね?」


「いや、よく似合っているよ。いつもみたいな髪型の時は元気で明るい印象になるが、今日の髪型は落ち着いた女性に見える」


アーノルドに言われてマリーは少し恥ずかしくなった。


無表情だか褒めてくれているだろう。


「男性も髪型で印象は変わりますよ」


「そうか?」


「ええ。まぁベデル様はどんな髪型でも似合いそうですけど」


今は耳が隠れるくらいの長さだが、もっと伸ばして肩くらいまであっても背が高いので似合うだろう。


なんなら束ねても似合いそうだ。


「グラッシス嬢はどんな髪型が好きだ?」


「え?私ですか?」


「参考までに聞いておきたい」


「それはベデル様に似合う髪型ということですか?」


マリーに言われてアーノルドは少し考えるように首を傾けた。


「一般的に好ましいと思う髪型を聞いてみたい」


「どうしてですか?」


「グラッシス嬢と友人になりたいから、君の感性を知りたいのだ」


アーノルドはいたって真面目な表情をしているが、マリーは笑ってしまった。


「友人が好きな異性の髪型なんて、いきなり聞く人いませんよ」


「そうか?」


「そうですよ!ベデル様って面白いですね」


「初めて言われたな」


マリーはまた笑ってしまった。


「そうですね……私は男性は短い髪型の方が好きですよ」


「短い……ショーンのようにか」


アーノルドの視線が丘の上に移動した。マリーもつられてショーンに視線を移す。


ショーンはかなり短い髪型でスポーツ刈りだ。


「あそこまで短くなくていいですかね」


「バッカス殿は私より長いな」


「そうですね。えっと……ベデル様は今の髪型でいいと思いますよ?」


「そうか?」


「はい!」


マリーは断言した。


「まぁ、もう少し短くてもいいかなと思いますけど」


アーノルドはうむと小さく言っただけで、特に返答はしなかった。

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