第八話 闇の祭壇
ゴオオオオッ!
勇者アルベルト、リスク(俺)、黒魔術師マーリン、シスターマリア、海賊船の女海賊グレイス・オマリー、反逆の逆の戦士バルドルの六人は、巨大な鉄の門を一斉に押し開けた。重厚な軋みを上げて扉が左右に開き、
そこに現れたのは血の神殿の最深部。
真紅の燭台が祭壇を照らし、壁一面に邪神の紋様と血痕が浮かぶ。
中央に立つは、闇の司祭カザール。その瞳は深い夜の闇よりも濃く光っていた。
「わざわざ、勇者の血を生贄にするために……お越しくださいまして、ありがとうございます」
闇の司祭カザール冷ややかに、挨拶をした。
「ティアマットを復活させるつもりか!そんなとんでもないこと、させるわけにはいかない!」
勇者アルベルトが剣を構える。
カザールは穏やかに微笑む。
「ふふ……地底竜ティアマットを復活させるには....そう、“勇者の血“が必要なのです。」
「しかしまぁ、あなた方にはここで死んでもらいますけどね」
バルドルは斧を振りかざし
「おう! 死ぬくらいならかかってこいよ、このデカい祭壇野郎!」
と叫んだ。
門番のように一礼すると、カザールは杖を高く掲げた。杖先から、黒い煙が蠢き、地面に闇の魔方陣が浮かぶ。
【禁術詠唱】
《ト・バール・メギド・ヴァッサラ……》
《時の彼方よりその名を呼ばん……》
《封ぜられし巨なる者よ、契約のもとに姿を顕せ……!》
「出でよ、失われし――」
「《鉄壁の巨人ゴルザン》!!」
――ドゴォオオォンッ!!
神殿の床が轟音とともに裂け、黒き魔方陣が唸りを上げながら回転を始めた。
その中心、血で染まった亀裂から、凄まじい巨体がゆっくりと立ち上がる。
シスターマリア震える声で
「あれが……ゴルザン……高さ10メートルを超える巨人……!」
と言った。
シスターマリアはすかさず両手を組み、胸に聖なる祈りを捧げる。
四柱の天使よ、我に力を――!
契約の光、審判の翼となれ!」
天井のステンドグラスを突き破るように、巨大な光の十字架が降り注ぐはずだった。
しかしカザールは冷笑を浮かべ、低く呟いた。
「邪悪なる光が魔法を消し去る……《Mマジックキャンセル》!」
鋭い黒煙の波動が光を呑み込み、シスターマリアの祈りの光は、まるで泡のようにはじけ飛んだ。
「うわっ……光が消える……!」
あれはマーリンが使った魔法を無効化にする黒魔術だ。
続けて、カザールは無造作に命じる。
「わしを肩に載せろ、ゴルザン」
ゴルザンは低くうなり声をあげ、一本の巨大な腕でカザールを掴み、その肩へと乗せる。
「魔法はすべてわしがキャンセルする。お前らに勝ち目は――ないッ!」
ゴルザンが口を天へ向けて咆哮した。
「グオオオオオオォォンッ!!」
その一撃が、手にした鉄棒を振り下ろす。
――ドガァァン!!
柱が一瞬で粉砕され、瓦礫が飛び散る。
「くそっ!この一撃、受けたら二度と立てねぇ……!」
「いきなり圧倒的すぎない!?」
「さては、ゴルザンの防御力は“鉄壁”どころじゃないわね……」
神殿は崩れ落ちそうなほど揺れ、ほこりと血の気が混ざった空気を全員が吸い込む。
アルベルトは歯を食いしばった。
「諦めるわけにはいかない……!」
闇に抗う一閃
アルベルトが剣を大きく振りかぶり、リスクとバルドルが斧や銃を構える。
「行くぞ、全力で――!」
「やってやるぜ、デッカい相手こそ俺の斧が映えるってもんだ!」
「私も負けないわよ!」
その瞬間、一斉に攻撃を叩き込もうとした刹那、祭壇の魔方陣が閃光を爆ぜさせた。
カザール高笑いをする
「愚かだ……まだ、始まったばかりじゃ!」
闇の司祭の声が再び響き渡る中、神殿はさらなる破壊と絶望へと踏み込んでいく。
「ティアマットの復活は避けられぬ運命……攻防すべてを無に帰すこの闇の祭礼を、最後まで見届けるがよい!」
ゴルザンの一撃に怯えながらも、勇者たちは再度刃を握りしめた。
闇の深淵から生まれた巨人を倒せるのか?
絶望的な状況でリスクはなにか手だてがないのか必死に考えていた。




