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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第18話 ラストエンペラー終編「玉座の終焉と運命の選択」

虚無の王座、最終決戦の地。


ラストエンペラー・愛新覚羅が顕現させた「虚無の王座」が、空間そのものを腐蝕させながら浮遊する。世界の理すらゆがみ始める中、瓦礫と土塵にまみれた戦場で、なおも立ち上がる者たちがいた。


「貴様の拳、俺に託せ」


ダイマオウが、血にまみれた己の拳をアイゼンハワードへ突き出す。


「……ああ。あんたの破壊、俺の裁きで締める」


二人の拳がぶつかる。破壊と正義が重なる瞬間、空気が爆ぜ、黄金と紅蓮のオーラが交差した。


その刹那、トランス・ジェンダーが天空から舞い降りた。


「回復じゃない……愛の投擲トスよッッ!!」


黄金のハート形のオーラがダイマオウを包み、肉体の裂傷が一瞬で癒える。


「フフ……さすがね、私の愛は万病に効くのよ」


皆の力が一つになった瞬間。戦場の空気が変わる。


だが、その直後、空間がねじれ、無数の黒い羽が舞い始めた。


「――っ!」


現れたのは、楊貴妃。


だがその瞳は、すでに意思を失っていた。ラストエンペラーによる精神操作が彼女を支配していたのだ。


「……やめろ、楊貴妃!お前の剣は……そんなもののためにあるんじゃない!」


アイゼンの叫びも虚しく、彼女の細身の刀が、迷いなく振り下ろされた。


ギィイン!!


寸前で受け止めたアイゼンの剣と、彼女の一閃がぶつかる。火花が散り、空間が震えた。


「お前を捨てたのではない。……守れなかったんだ」


アイゼンの叫びに、一瞬、楊貴妃の瞳が揺れる。


「……遅いのよ……」


その言葉とともに、彼女の手が震え始める。そして、自らの喉元に刃を向け―


「私は、あなたに殺されたかった……でも、それじゃ、私が私じゃなくなる」


涙を流しながら、楊貴妃は自らの胸元に刀を突き立てた。


「――っ!やめろ、やめるんだ楊貴妃!!」


「ありがとう……アイゼン……」


彼女の体が崩れ落ちる。その手の中には、砕けた精神制御装置の破片――自らの意思で抗った証が握られていた。


戦場に、一瞬の静寂が流れる。


それを断ち切るように、ラストエンペラー・愛新覚羅の声が響く。


「愚かな……人の情など、塵芥に過ぎん。では見せてやろう。これが“真の王”の力だッ!!」


玉座から黒い稲妻が奔り、地上に影の軍勢が溢れ出す。

最終幕《龍影万象波・改》、が発動された。


「第二波《龍影万象波・改》、発動」


玉座の上で、ラストエンペラー愛新覚羅が静かに指を鳴らした。

刹那、空間そのものが“裏返る”音が響く。


ゴウウウウ――……ッ!


世界が泡のように弾ける。

現実が、虚構に取って代わられる。

視界が割れ、色彩が消え、重力が狂い、言葉すら通じなくなる。


人間の知覚の限界を超えた“存在そのものの崩壊領域”。


「ここが……ッ、現実か……?」


アイゼンハワードは膝をつきながらも剣を支えに立ち上がる。

空は反転し、地は沈み、己の姿すら「他者」に見える幻覚地獄。


トランス・ジェンダーは壁に叩きつけられながらも叫ぶ。


「これじゃ……誰も、誰も戦えない……っ!」


玉座に座す愛新覚羅は、もはや神のように宙に浮かび、声を響かせる。


「これが“虚無の王座”の完成形。

この空間では、私が現実の定義だ。生も死も、記憶すらも……私の掌にある」


事実、兵馬俑たちは再生を繰り返し、空間のどこに斬撃を放っても届かない。

斬った瞬間、敵が“別の存在”にすり替わるのだ。


アイゼンは、膝をついたまま、何かを呟く。


「なら……俺は、お前を“定義”し直すまでだ……」


彼の瞳が青白く輝きはじめる。


「ダイマオウ……トランス・ジェンダー…… アイリス 皆、 手を貸してくれ」


その呼びかけに、負傷したダイマオウが笑う。


「クッ……仕方ねえ。貴様の拳、俺がぶち込んでやるよ!」


彼の拳が、アイゼンの剣の柄に添えられる。


「そして……私の愛もッ!!」

トランス・ジェンダーが叫び、輝くハート型の光球を剣に込めた。


「まだ、世界は終わらない。わたしあきらめないから!」

アイリスが叫び支援型超電磁兵器《イシュタルMk.X》を展開する。


アイゼンハワード、覚醒。


「《皇断・雷哭の破刃こうだん・らいこくのはじん》」


四人の力が一つとなった瞬間、剣に稲妻が走る。

空間が揺らぎ、時間が震える。

虚構に打ち込まれる、“本物の現実”。


「この剣が、貴様の偽りの玉座を断つ……!」


ラストエンペラー愛新覚羅が、はじめて目を見開いた。


「なに……!? なんだ!“その剣”は――」


「終わらせる。ここで、お前を」


ズガァァァァァァァンッッッ!!!!


雷鳴とともに放たれた斬撃が、空間を割った。

あらゆる幻覚が断たれ、虚無の王座が大地に墜ちる。

黒い棺が砕け、兵馬俑が塵に還る。


「ぐ……アアアアアアアアアア!!」


ラストエンペラー愛新覚羅が叫ぶ。身体が砕け、玉座とともに奈落へと落ちていく。


「この私が……虚無を支配したこの私が……なぜあああああああ――――!!」


最後の断末魔が消えると同時に、空が晴れる。


千いた影の兵馬俑の兵士は灰となり土に戻り崩れていった。

千の鏡は砕け、戦場に静寂が戻った。


灰の中、アイゼンは一人、剣を土に突き立てていた。


そして

その傍らには、何も言わずに眠る楊貴妃の遺体。

静かに、彼は彼女の手を握る。


「……これで、終わった。だが……本当の答えは、これから探す」


終幕


虚無の王座は崩れ落ちた。

だが、それはほんの一部にすぎない。

“支配”と“幻影”は、いつでも人の心に忍び寄る。


そして、アイゼンたちの旅は続く。

たとえ何度でも、闇が襲い来ようとも。


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