第14話 時の門
《闇神核》それは、かつて世界を滅ぼしかけた“始まりの力”であり、同時にすべてを終わらせる“鍵”でもあった。
今、その闇神核を掌にするのは、アイゼンハワード。
その隣には、光のアース《ライトアース》を手にした天使レイラかつての戦士・アリエルの記憶を宿す者。
二人は、かろうじてDr.ノアの秘密研究所最奥に囚われていたジェームズを救出した。だが、それこそがDr.ノアの策略だったのだ。
「……間に合ってしまったか」
アイゼンハワードが唇を噛む。
その時。世界の構造が音を立てて崩れた。
地下深くに封じられていた“古代の扉”が、鈍い鼓動とともに開き始める。
《時の門》
それは、時の流れそのものに干渉し、過去を塗り替え、未来を改変する力を持つ“最終兵器”だった。
天界ですら封印を恐れた、禁忌の力。
ジェームズ博士の救出に成功したアイゼンハワードとレイラ。だがその直後、空間に異様な歪みが走った。
「……これは、まさか……!」
唖然とするレイラの前で、アイゼンハワードの胸元の《闇神核》が淡く脈動を始める。それに呼応するように、レイラが携える《光神核》も共鳴し、虚空に禍々しい渦が発生する。
その渦の中心で、ゆっくりと開いていく
巨大な門《時の門》。
「止まらない……これがノアの目的だったのか!」
アイゼンハワードがそう叫んだとき、開きかけた門の前に、満足げな顔のDr.ノアが姿を現した。
「いやあ、よくここまで来てくれた。まったく手間のかかる被検体たちだよ」
彼の背後には、黒い稲妻のようなエネルギーが奔り、門が完全に開かれようとしていた。
「アザリエルは灰となった。だが、奴の存在すらこの計画の一端に過ぎなかったのさ。真に必要だったのは、《闇神核》をこの座標に運ぶ“運命”……つまり君だ、アイゼンハワード」
ノアの言葉に、アイゼンハワードは目を見開く。
「……俺を利用していたのか……!」
「利用? 違うな。君は選ばれたのさ、この世界を終わらせる鍵としてね」
その時、時の門が完全に開いた。
白と黒が混ざり合う虚無の空間が、現実の空間を呑み込もうと広がっていく。
「さあ、最後の幕を開けよう。未来を変えるのは、天才である私だ!」
Dr.ノアの高笑いが響く中、空間は崩壊と再構築を繰り返し、現実が不安定になっていく。
レイラが剣を抜き、アイゼンハワードは拳を握りしめた。
運命を決する闘いが、いま幕を開ける。




