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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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【最終話】 再生の町、旅立ちの教室

スフェラ村に、またひとつ季節が巡っていた。


草の匂い、雨あがりの石畳、魔力の浮かぶ空気。

今では村の広場も整備され、かつての“焼け跡”だった場所には、

再建された「テルマの家」が立っている。


その教室の中

今日は、リーディオ・ゼロ最後の授業だった。


白いローブの裾を揺らしながら、老いたゼロは黒板の前に立つ。教室には、年老いた弟子たちと、その子どもや孫たちも混ざっていた。小さな椅子に座る若者たちの目は、きらきらと輝いている。


「今日で、私の教えは終わりだ。

……でも、魔法は終わらない。


お前たちが使う限り、世界はつながっていく。

知識は、破壊も再生も運ぶが、最後に残るのは、心だ」


ゼロは、かつて自らが焼き捨てた“初級魔導の書”を掲げた。サーテンリが残し、自らが修復した“魔法の礎”。


「これは“赦し”の象徴じゃない。

 これは、“向き合い続けた記憶”だ。


 お前たちも、何かを壊すことがあるかもしれない。

 でもそのときは、どうか逃げずに、直してみろ。時間がかかっても、いい」


誰かが鼻をすする音が聞こえた。


ゼロは微笑み、教室の窓をゆっくり開けた。

夕方の風が入り、チョークの匂いを運んでくる。


「これで、わたしの授業は終わりだ。


旅立て。


お前たちの未来を、“作る”ために」


拍手が起こり、涙と笑顔が混ざった。


その夜、リーディオ・ゼロは静かに眠りについた。


長い罪の旅路を終え、

破壊から再生への道を歩ききって


数日後:丘の上の墓地

丘の一角、古い大樹の根元に、ひとつの墓が建てられていた。


【ここに眠る リーディオ・ゼロ】


 壊した者 そして、教え導いた者


墓前に立つのは、黒いマントを肩にかけた中年男いや、今では彼も、白髪の混じるおっさんだった。


アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウス。


彼は煙草に火をつけることもせず、ただ無言で、風に揺れる草の音を聞いていた。


「……教室、見てきたぞ」


ぽつりと、低く語りかける。


「お前の弟子ども、立派になってた。

 魔力のない子どもも、耳の聞こえない子も、全部お前が拾って、教えてきたんだな」


風が吹き、花が揺れた。


アイゼンハワードは膝をつき、墓に手を置いた。


「お前は……英雄なんかじゃねぇ、って、ずっと言ってたよな。


けどな


お前は“隠れた英雄”だったぜ、リーディオ ゼロ」


沈黙。


やがて、ポケットから取り出した煙草にようやく火をつけ、

空へ向かって煙をひと筋、吹き上げた。


「……またな、相棒」


それだけ言って、彼はゆっくりと立ち上がった。


空は晴れ、スフェラ村の上空には、かつてないほど穏やかな魔力の風が吹いていた。


挿絵(By みてみん)


『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』


―完―




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