第10話 真の因縁と、封印された歴史
「アル様、リスクが残した手紙を渡してくれってお願いしたのになんで闘ってるんですか!」
さっちゃんの声が虚零の空間に響いた。
アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウ
先ほどまで“魔獣サラマンダー”として暴れ回っていたその男は、
どこかバツが悪そうに、肩をすくめて言った。
「いやぁ……ダイ・マオウ君を見てたら、血が騒いでしまってね。ラスボス感、出したかったというか……つい」
「もうアル様! 魔獣にすぐなるんだから!!」
「ははっ……さっちゃんが来てくれて、本当によかったよ」
リーリアが苦笑いで肩の力を抜いた。
「アル様、後で説教部屋ですからね。それはさておきリスクの手紙、ちゃんと渡してください」
「はいはい、わかっておりますよ」
アイゼンハワードが懐から、黒い封蝋の封筒を取り出し、静かにダイ・マオウに手渡した。
その手紙を受け取るとき、ダイ・マオウの指がかすかに震えた。
「……英雄リスクの、手紙か」
封を開け、ゆっくりと読み進めるダイ・マオウの眼差しに、
かつての友情と、背負うべき運命の重さがよぎる。
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リスクの手紙(遺書)
ダイ・マオウ君へ
ゼロの能力者が再び現れ、もしその者が暴走したとき
止められるのは君しかいない。
ゼロの能力は、マイナスのステータス効果を受けることで“発動”する。
ゼロの能力が3つ発動すれば「ゼロの法則」が発動する。
つまり、能力が0からマイナス方向に向けば向くほど強くなる。
逆に、プラス方向にステータスが維持されれば発動しない。
ゼロを止める唯一の方法は、
「対象者をひたすらパプ+で強化で上げ続けてやること」だ。
これは俺の体で実験した。
君が、必ずその手で止めてくれると信じてる。
リスクより。
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読み終えた瞬間、ダイ・マオウの心に熱いものが込み上げた。
(……お前、バカみてぇに、まっすぐだな……)
ポケットに手紙をしまうと、彼は空を見上げ、静かに言った。
「……任せとけ。絶対、止めてみせる」
さっちゃんの作戦タイム!
「というわけなのよ!」
さっちゃんが勢いよく両手を叩く。
「はいこれ! 魔導 攻撃アップるジュース!」
ナンバ・ラッカに。
「こっちは! 魔導 防御力アップシート・特製サロンパスVer!」
ユキネの背中にベタッ!
「そして、私の魔法《Sペード》でリーディオのバカをゼロの能力者のスピードを延々と上げて、ゼロの法則を封じ込める!」
「全員、私の用意したアイテムちゃんと受け取った!? さぁ、準備して!」
ベビー姿のまま、女将のように次々と指示を飛ばすさっちゃん。
【攻撃アップ】 魔導 攻撃アップるジュース×20本
【防御アップ】 魔導 防御アップシート×20シート
がさっちゃんより仲間たちに手渡された。
リーリアがマントを翻し、笑った。
「さすが、姐御……この軍、完全にあなたが指揮してますね」
「……ふう」
アイゼンハワードが立ち上がり、額に手を当ててため息をついた。
「やれやれ、有能すぎるさっちゃんには本当に頭が上がらない」
彼の背筋はまっすぐに伸び、優雅な微笑みとともに言う。
「では、行こうか。第五層へこの世界の平和を守るために」
ダイ・マオウが二丁拳銃を構え、歯を食いしばって応えた。
「……ゼロの能力者、俺がぶん殴ってでも止めてやる!」
全員の目が、闇の深層、第五層へ向けられた。
次なる試練は、“ゼロの暴走者”。リーディオゼロの待つ《虚数の玉座》
アイゼンハワードとさっちゃんが仲間になった。
だが、もう彼らはバラバラじゃない。
心は一つだった。
魔法名:Sペード(スピード・ペース・ドライブ)
効 果:対象者1名の素早さ(SPD)を10秒間だけ+22する。
複数回の重ね掛け不可/再発動には10秒のクールタイムが必要。
詠 唱:「聖なる風よ、○○に俊足を Sエスペート!」
備 考: シスターマリアが2番目に覚えた魔法。




