第8話 裏切り刃 成敗! その2《静寂の氷牢 ―ダイ・マオウ、眠りを越えてゆけ》
【氷牢前・白の門】
「ここが……“静寂の氷牢”……」
リーリアが魔力探知用の水晶をかざすと、光がかすかに震える。
「すべての音、熱、魔力を遮断する凍月結界……並の魔法じゃ解除できないわ」
「中に入るだけでも、精神が削られるっていう話よ」
ラッカは苦笑いを浮かべながら爆弾袋を握る。
「おおこわ……でもまあ、爆弾なら何とか……」
「……あ、ちょっと待って」
ダイ・マオウが、ぴょこ、と小さく手を上げる。
その瞬間、ギィ……ン……ッと音もなく、白の門が静かに開いた。
「え? え? 何したの?」
(テレパシー)
《ちょっとだけドアの気持ちになってみた》サイコキネシス(念動力)
「……マジで何なんこの子……」
リリーアが引いた。
【第1層:冷気の迷路】
「ここ、普通に出口わからへんのやけど!」
ラッカが凍った壁に爆弾を仕掛けるも、結界で無効化される。
「通常魔法も物理も効かない……視覚と聴覚を奪う精神破壊型トラップね……!」
だが、ダイ・マオウはぼんやり歩きながら呟く。
「……んー……こっち」
そしてふらふらと進んだ先が、正解の出口だった。
「どうしてわかるの!?」
(テレパシー)
《迷子の悪魔をさっきくしゃみで召喚したら、出口の方に逃げてった》
「くしゃみが召喚ってどういう体質やねん!!知らんけど」
【第3層:精神干渉の空間】
この階層は、「囚人の夢」が漂い、近づく者の心を蝕む“ドリームミスト”が充満していた。
リーリアが急に足を止める。
「……やばい……誰かの、絶望して泣いてる夢が……入ってきて……」
「ワイもや……うちの爆弾がしけって爆発せん夢見た……うう……」
そのとき――
「……すぅ……すぅ……」
ダイ・マオウが、スヤァ……と立ったまま寝た。
その瞬間、全員が同時にその場で寝落ちした。
目を覚ましたときには、誰一人として夢の影響を受けていなかった。
「……今のって」
(テレパシー)
《オレ、寝ると周りも眠くなる。夢の干渉が切れたんだと思う》
「もうその体質、国家レベルで管理した方がええって……」
【第5層:悪魔の番犬・ヒョウガーム】
ついに、ユキネがいる第6層の手前。
そこには、侵入者を氷塊に変える番犬型魔獣が待ち構えていた!
リーリアが詠唱を始めようとするが
「グルルル……!」
「……へっくしゅん!!」
ダイくしゃみと同時に、空間が裂けた。召喚魔術(偶発的)
そして、なぜかウロウロしていた低級悪魔・デンカイさん(ぐるぐる眼鏡)がヒョウガームの上に召喚される。
「ウワーッ!? こんなとこ呼ばれても困るってばァ! おれ氷弱点なんスよォォ!」
→ そままヒョウガームと乱闘 → 相討ち → 道が開く。
「くしゃみで敵倒すなあああああッ!!」
「なんなのこの体質!!(でも助かってる!!)」
【第6層:絶対隔離房】
冷気が濃密に満ちる最深部。そこに、氷の牢の中で座るユキネがいた。
ダイはそっと牢に手を当てた。
《……ユキネ、起きて》
テレパシーで語りかけた瞬間、氷の手錠がゆっくりと溶け出す。
「ダイ……また、来たのね。今度はちゃんと……迎えに」
「ごめんね、遅くなった」
「ワイらの救世主が、超能力で全部ぶっ壊してくれたわ!」
ユキネは氷の剣を取り戻し、ふっと口元だけで笑う。
「……やっぱり、あなたたち、普通じゃないわ」
「うん、よく言われる」
ダイ・マオウは笑みを浮かべた。
そして、ユキネを氷の牢から助け出した。




