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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く2 ― さっちゃん先生 再開発編』

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第5話 市長は、笑っている

その日、町はざわついていた。


「来るぞ」

「誰が?」

「市長が」


まるで台風情報である。


鷹宮市長、降臨


黒塗りの車。

スーツ姿。

歯が光る。


市長・鷹宮 恒一は、完璧な笑顔で降り立った。


「いやあ〜、この町は“可能性”がありますね!」


ミツ婆、即ツッコミ。

「可能性は昔からあったよ。

 金が来なかっただけで」


職員、咳払い。


鷹宮、市内の子どもを抱き上げる。


「未来を担う子どもたちと一緒に!」


フラッシュ。


子ども、泣く。


母親「……人見知りで」


鷹宮、笑顔固定。


「ははは! 元気がいい!」


ミツ婆、小声。


「泣かせといて元気って言うの、

 だいたい信用ならん」


黒川の前に来る。

「お元気そうで!」


黒川、杖をつきながら。

「ええ。

 治してもらってますから」


視線、診療所へ。


鷹宮、一瞬だけ眉が動く。


ONI FAMILY MEDICAL CENTER。


鷹宮が、白衣のさっちゃんを見る。


「いやあ、噂の“鬼医者”さんですか」


さっちゃん、即応。


「患者さんですか?」


「いえ、視察で――」


さっちゃん、にっこり。


「……じゃあ」


一拍。


「町の症状だけ来たんですね」


場の空気、凍る。


問診(という名の公開処刑)

さっちゃん、カルテを出す。


「再開発、立ち退き、説明不足。

 この辺、どこが痛みます?」


鷹宮「ははは、冗談が――」


「血圧、上がってますよ。

 “民意軽視型・自己過信症候群”」


ミツ婆、拍手。


「出た! 病名!」


一方その頃。


市役所の片隅で、森下職員が青ざめていた。


・補償資料の数字が合わない

・説明会での虚偽記録

・過去案件との酷似


若手職員「これ、前例と同じですよね……?」


森下、汗。


「知らない。 聞いてない。決まってた」


決まっていた誰かに。


診療所前。


鷹宮、最後まで笑顔。


「市としては、皆さんのためを思って」


さっちゃん、白衣の袖をまくる。


「医者もね。

 “本人のため”って言葉を使う人ほど、

 だいたい危ないの」


鷹宮、一瞬だけ目が冷える。


「……ご意見は、承りました」


車が去る。


黒川がぽつり。


「見えたな」


ミツ婆。


「顔だけは立派だねぇ」


さっちゃん、独白。


「町を壊す病気ってね。」(静かに笑う)



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