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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く ― さっちゃん先生、開業記』

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第7話 黒川会長、倒れる

朝の町内会掲示板。

貼られた一枚の紙。


【回覧板】

《無許可診療所にご注意ください 町内会長 黒川》


文字、でかい。

朱印、無駄に多い。


ミツ婆

「また始まったよ……」


ケンジ

「会長、暇なんすか?」


ガルド

「殴っていい?」


焔丸(止める)

「規律!!」


その頃。

黒川会長、町内会事務所。


背筋をピンと伸ばし、

血圧のことは考えない。


黒川(独白)

倒れたら、終わりだ。

弱ったら、舐められる。


そこへ。


ズン。


床が揺れる。


黒川

「……?」


次の瞬間。


ドサッ。


昼。


ONI FAMILY MEDICAL CENTER。


担ぎ込まれるストレッチャー。


ガルド

「会長が倒れた!!」


ミツ婆

「罰が当たったんかい!!」


黒川

「ちが……っ……」


さっちゃん、見る。


血圧。脈。呼吸。


一瞬、顔が険しくなる。


さっちゃん

「……長いね」


黒川

「何が……」


さっちゃん

「我慢してた期間」


処置室。


エリオット

「慢性高血圧、心臓に負担」

「治療拒否の痕跡、山ほど」


カグヤ

「“忙しい”って言葉で全部誤魔化したタイプ」


黒川

「……私は……」


声、弱い。


黒川

「会長だから……」


さっちゃん

「会長でも、人」


静かに。


さっちゃん

「……あんた」


黒川を見る。


さっちゃん

「自分を大事にしなかったね」


沈黙。


黒川、初めて目を逸らす。


黒川

「……」


黒川

「町のためだと思ってた」


さっちゃん

「違う」


黒川

「……え?」


さっちゃん

「自分が壊れるまでやるのは、

 町のためじゃない」


黒川

「……怖かった」


初めての弱音。


黒川

「弱ったら、

 誰も言うことを聞かなくなると思ってた」


ミツ婆(小声)

「……子どもかい」


ケンジ

「会長も人間っすね」


さっちゃん、深く息を吸う。


そして、

いつもの大声。


さっちゃん

「だったら治しなさい!!!」


黒川

「!?」


さっちゃん

「立場じゃない!」

「肩書きでもない!」

「生きてる体を!!」


黒川、笑う。


小さく。


黒川

「……敵に診られるとはな」


さっちゃん

「患者に敵はいない」


即答。


点滴が落ちる。


心電図、安定。


黒川、目を閉じる。


黒川

「……少し、休む」


夕方。


掲示板の紙が、剥がされている。


その横に、

新しい紙。


《お知らせ》

本日、会長は体調不良により静養

診療所への中傷は撤回します


字、震えている。


さっちゃん(独白)

強い人ほど、

倒れるまで弱音を吐けない。


でもね。


倒れた場所が、

“誰かの手の届く場所”なら

人は、まだ戻れる。


ONI FAMILY MEDICAL CENTER の灯り。


今日は、少しだけ優しい。

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