表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く ― さっちゃん先生、開業記』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1499/1526

第2話 無料診療は怪しい?

ONI FAMILY MEDICAL CENTER 開業三日目。


診察室はまだ空きが多い。

理由は、はっきりしていた。


町内会長・黒川源三。

七十代、眉毛が常に怒っている男。


町内会館で、今日も声が響いていた。


黒川会長

「いいですか皆さん!

“無料診療”など続くわけがない!!

最初は優しく、後から魂を取る!

それが鬼というものです!!」


町民

「た、たしかに……」

「でも昨日ケンジ助けてもらってたよね?」

「祟りの前兆かも……」


完全に鬼医者危険説が流布されていた。


その噂は、当然さっちゃんの耳にも入る。


さっちゃん

「……はぁ」


エリオット

「気にしなくていいですよ。

偏見はデータではありません」


さっちゃん

「……でもね、

放っておくと“町内会決議”とかされるのよ」


角が、ぴくっと動く。


その夜。


ドン!!


ONI FAMILY MEDICAL CENTER の扉が、

半分しか開かない。


呻き声。


白石

「い、いだだだだだ……!!」


担ぎ込まれてきたのは、

町内会副会長・白石清吉。


昼間、黒川会長の横で

「そうだそうだ」と頷いていた男である。


エリオット

「……ギックリ腰ですね」


白石

「言わないで!!

名前を聞くだけで痛い!!」


さっちゃん、腕を組む。


さっちゃん

「……あの」


白石

「ひぃっ!?」


さっちゃん

「反対派ですよね?」


白石

「そ、それとこれとは別!!

腰は思想と関係ない!!

信条は硬くても腰は脆いんだ!!」


即答だった。


さっちゃん

「……ふふ」


一瞬、笑う。


そして、真顔。


さっちゃん

「じゃあ、治すわ。

反対でも、文句言っても、

痛いなら来なさい」


白石

「……」


白石の目が、潤む。


治癒開始。


鬼族式・腰部魔力調整。


ボキッ

(※実際には鳴ってない)


白石

「……あ?」


白石

「……立てる?」


白石

「……立ててる!?」


三秒後。


白石

「立ててるぅぅぅ!!!」


その場で正座。


白石

「すみませんでした!!

無料とか怪しいとか!!

鬼とか関係ないです!!

あなたは……」


さっちゃん

「医者です」


白石

「医者です……!」


翌朝。


町内会掲示板。


【重要】

昨日、副会長の腰を救ったのは

例の鬼医者です。

腰は思想を超えます。


——白石


黒川会長

「白石ぃぃぃ!!!」


その日の診療所。


患者、少し増える。


ミツ婆

「……腰、診てくれるかい?」


さっちゃん

「倒れる前に来なさい!!!」


声は怖い。

手は、優しい。


鬼医者の評判は、

また一つ、町に根を下ろした。


——偏見よりも先に、

痛みは、正直だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ