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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『さっちゃん先生の双子物語 アカネとソラ 』

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第8話 重なる場所

実習最終日。


突如、警報が鳴り響く。


「大規模実習事故発生!」

「結界破損、負傷者多数!」


模擬施設が一気に戦場と化す。


現場は混乱

瓦礫、魔力乱流、悲鳴。


ガルドが叫ぶ。

「こっち! 押さえきれねぇ!」


ミナは震えながら詠唱。

「ひ、光……!」


クロウが舌打ちする。

「ちっ、配置がバラバラだ!」


その時。


アカネとソラが、

同じ瓦礫の影に飛び込む。


一瞬、互いを確認する間もなく――


背中が、自然に触れる。


「……来たね」

ソラが小さく言う。


「……うん」

アカネが息を整える。


言葉はそれだけ。


次の瞬間。


魔力が、完全に重なる。


治癒陣が安定する。


乱れていた魔力循環が、

まるで“最初からそうだった”かのように整う。


エルナが息を呑む。

「……空気が、静か」


トウマが呆然。

「え、なにこれ……」


クロウ。

「双子……やべぇな」


教師席がざわつく。


教師陣

蒼井教授、眼鏡を押し上げる。

「理論外だ」


カグヤ、即座に否定。

「違う。制御は荒い」


焔丸。

「規律違反……ではないが」


エリオットは、

ただ静かにモニターを見つめる。


「……不完全だ」


負傷者は全員救命。


拍手が起きそうになった、その瞬間。


「静かに」


低く、鋭い声。


さっちゃん先生が、

現場に足を踏み入れる。


教室よりも、

病棟よりも、

怖い顔。


さっちゃんの怒り


「……何を、勘違いしてるの」


双子を見る。


アカネが一歩前に出ようとして

止まる。


「これはね」

さっちゃんは続ける。


「才能じゃない」


教師陣が息を呑む。


「“関係性”よ」


空気が凍る。


「背中を預けた?」

「共鳴した?」


「それはね――」

「まだ、一人で立ててない証拠」


アカネの角が、かすかに揺れる。

ソラの手が、無意識に握られる。


「医療はね」

「誰かに寄りかかることじゃない」


一拍。


「“選んで信じる”こと」


静寂


誰も、反論できない。


さっちゃんは最後に言う。


「今日は事故対応としては合格」


「でも評価は保留」


双子を見る目は、

母ではなく、完全に教師だった。


「重なったのは、偶然」

「次は自分の足で立ちなさい」


夕方。


二人、並んで歩くが、

距離は少し空いている。


ソラ。

「……頼っちゃったな」


アカネ。

「……逃げたかも」


でも、否定はしない。


「それでも」

アカネが言う。


「また、同じ現場に立つなら」


ソラが頷く。

「今度は、横じゃなくて」


二人同時に。

「前を向いて」


角は、光らない。


でもそれが一歩目だった。


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