第六話 胎動で家具が吹き飛ぶ
深夜2時17分。
魔界住宅街・静寂のはずだった。
異変、始まる
さっちゃん
「……」
――ぐにっ。
腹部、強烈な胎動。
さっちゃん
「……今の、蹴った?」
次の瞬間。
ゴゴゴゴ……
棚が震え、
椅子が浮き、
観葉植物が逆さまになる。
さっちゃん
「……え?」
ベッド脇の机、ふわっと浮遊。
さっちゃん
「ちょっと待って」
ドン!!
机、壁に激突。
エリオット(眼鏡装着)
「……胎動、確認」
メモ帳を開く。
エリオット
「時刻2時18分。
魔力振動、通常胎児の約4.6倍」
さっちゃん
「記録してる場合!?」
家具、全面反乱
ドォン!
ソファ、天井に張り付く。
カーテン、竜巻。
さっちゃん
「ねぇ!?
これ普通の妊娠!?」
エリオット
「鬼族の双胎ですから」
さっちゃん
「説明になってない!!」
腹部、自己主張
再び
ドン! ドン!
さっちゃん
「ちょ、ちょっと!!
中で相撲取らないで!!」
腹部、ぼわっと発光。
エリオット
「……胎児A、活発。
胎児B、対抗心あり」
さっちゃん
「競うな!!
外でやれ!!」
緊急対策会議(夫婦)
エリオット
「魔力遮断結界、展開します」
結界展開。
3秒後。
バキィン!!
結界、割れる。
エリオット
「……成長が想定を超えています」
さっちゃん
「誇らしげに言わないで!!」
さっちゃん
「……あのね」
腹部に手を当てる。
さっちゃん
「聞きなさい」
室内、ピタッと静止。
さっちゃん
「夜中は!
家壊さない!!」
しん。
胎動、ぴたり。
家具、静かに着地。
夫婦、沈黙
エリオット
「……教育、早いですね」
さっちゃん
「先生ですから」
その直後。
ポン
小さな胎動。
さっちゃん
「……今のは?」
エリオット
「……謝罪のキック、かと」
さっちゃん
「礼儀正しいのが一番怖い」
遠くで
棚が一つ、
静かに倒れた。




