第五話 研究所、産科になる
エリオット研究所。
かつては
・無機質
・静寂
・白と銀の世界
だった場所。
現在。
研究所、様子がおかしい
さっちゃん
「……何これ」
廊下一面、魔法陣。
天井から下がる結晶。
壁には
《安産祈願》《母子魔力安定》の札。
エリオット(白衣)
「改装しました」
さっちゃん
「“改装”のレベルじゃないわよ!!」
魔界産科フル装備
エリオット
「こちらが魔力安定装置」
装置、ゴウン……と低音。
さっちゃん
「……落ち着くのが腹立つ」
エリオット
「胎教魔法スピーカー」
♪ポロン…ポロン…(優しい魔界音楽)
さっちゃん
「なんで子守歌が古代戦争叙事詩なの」
エリオット
「文化です」
奥に鎮座する。
異様にゴツい椅子。
角付き。
鎖付き。
耐衝撃魔法三重。
さっちゃん
「……何」
エリオット
「鬼族用分娩椅子です」
さっちゃん
「聞いてない」
エリオット
「設計しました」
さっちゃん
「誰に許可取ったの」
エリオット
「医学に」
見学者たち
ユミカ
「す、すごく……」
目キラキラ。
ユミカ
「ロマンチック……!」
雷士
「どこが!?」
雷士
「医療的にどうなんですかそれ!!」
エリオット
「安全です」
雷士
「“鬼の踏ん張り想定耐久値”って
どの医学書に載ってるんですか!?」
エリオット
「私の」
雷士
「自作!?」
さっちゃん
「ちょっと待ちなさい」
角、ピキッ。
さっちゃん
「ここは研究所よ! 私の職場よ!?」
エリオット
「でした」
さっちゃん
「……“でした”?!?」
エリオット
「ここは」
一瞬、間を置く。
エリオット
「あなたと子どもを守る場所に変わりました」
シン……。
ユミカ
「……」
雷士
「……」
さっちゃん
「……」
顔、赤くなる。
さっちゃん
「……ばか」
エリオット
「事実です」
その瞬間。
装置が作動。
《胎教魔法:母の感情に反応》
♪ドゴォォォン!!(魔界ロック)
雷士
「胎教ってレベルじゃない!!」
ユミカ
「赤ちゃんノリノリ!」
さっちゃん
「……ねえ」
エリオット
「?」
さっちゃん
「産まれる前から
この家族、騒がしすぎない?」
エリオット
「想定内です」
研究所は今日も平和(?)。
こうして、
最先端研究所は
正式に“魔界産科”になった。




