表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅10 さらば相棒、最後に盗むのは―運命」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1473/1526

リュカ編 逃げる者は、生き延びる

世界は今日も、普通に壊れていた。


石橋が崩れたのは、リュカが渡り終えた“あと”。

落雷は、彼が立っていた場所の“隣”。

暴走した魔導車両は、彼を避けるように横転した。


「……またか」


少年は立ち止まり、息を整える。


助かった理由は分からない。

分かりたくもなかった。


旅の理由


リュカは、どこにも長く留まらない。


街に残れば、

誰かが言う。


「君が来てから、事故が増えた」

「いや、減った」

「いや、確率がおかしい」


どれも、正しい。

どれも、怖い。


だから歩く。


運命が不安定な場所へ、なぜか足が向く。


それが自分の意思なのか、

それとももう決められているのか。


分からないまま、進む。


護符と教え


胸元の護符に触れる。


アイゼンから渡された、

たった一枚の紙。


【怖いときは、逃げろ】


それだけが書かれている。


逃げることは、

卑怯じゃない。


戦わないことは、

悪じゃない。


そう言ってくれたのは、

あの人だけだった。


確率事故


市場で爆発が起きる。


リュカは反射的に、

路地へ走る。


爆風は、彼を追わない。


代わりに、

背後で立っていた男が吹き飛ぶ。


「……ごめん」


誰に向けた謝罪か、分からない。


生き残るたび、

誰かが代わりに消えている気がする。


それが一番、怖い。


英雄じゃない


剣は持たない。

魔法も撃てない。


人を守る力なんて、ない。


それでも――

生き延びてしまう。


「僕が選んだわけじゃない……」


声は、震えていた。


選ばない自由。

それは、

責任から逃げる自由でもある。


そのことを、

リュカは痛いほど分かっている。


それでも歩く


夜。


焚き火のそばで、

リュカは膝を抱える。


逃げ続けていいのか。

生き続けていいのか。


答えは出ない。


だが。


「……誰かが勝手に決めるよりは、いい」


それだけは、

はっきりしていた。


動く者の戦場


遠くで、

未来が歪む気配がする。


また“何か”が起きる。


行かなくてもいい。

逃げてもいい。


それでも足が、

自然と前に出る。


「選ばないって……

選び続けることなんだな」


リュカは歩き出す。


英雄にならないために。

犠牲を選ばないために。


ただ、生きるために。運だけで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ