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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅10 さらば相棒、最後に盗むのは―運命」

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第6話 運命を盗む

〈クロノ・ロック〉の中枢は、

もはや機械には見えなかった。


光の輪が幾重にも重なり、

時間そのものが、ゆっくりと回転している。


アイゼンは、そこへ歩み寄る。


足取りは確かだった。

迷いはない。


「……やめて」


ルアーナの声は、届いていた。

それでも、彼は振り返らない。


制御核の前に立つと、

アイゼンは手袋を外し、素手で触れた。


――冷たい。


だが、それは恐怖ではなかった。


「起動条件、最終確認」


無機質な声が、空間に響く。


《解除には、等価の代価を要求します》

《指定:一名分の確定寿命》


アイゼンは、帽子を脱ぐ。


「十分だ」


静かに、そう言った。


「俺の分で足りる」


ルアーナが、叫ぶ。


「やめてぇぇ!!」


リュカは歯を食いしばり、

ただ、見つめることしかできない。


装置が応える。


《代価を受諾》

《対象:アイゼンハワード》

《予定された死を固定します》


その瞬間。


アイゼンの胸に、

何かが“収まる”感覚があった。


未来が、閉じる。


だが同時に――

世界が、開く。


光が弾け、

空間が歪む。


無数の未来線が、

蜘蛛の巣のように広がり、

固定されていた一本が、静かに外れていく。


誰が、いつ死ぬか。

誰が、生き残るか。


それを決める“秩序”が、

解かれていく。


「……成功、だ」


アイゼンは、小さく息を吐いた。


足元が、崩れる。


だが、倒れない。


最後まで、立っている。


その背後で、

レイヴが腕を組んで見ていた。


「派手じゃないねぇ」


少しだけ、声が低い。


「でも……綺麗だ」


一拍置いて、

いつもの調子で笑う。


「未来を盗むなんてさ」


「最高の大仕事だろ?」


「イヒヒヒヒ」


ルアーナは、床に崩れ落ちた。


「……戻ってきてよ……」


返事はない。


アイゼンは、ゆっくりと振り返る。


二人を見る。


泣いている少女と、

耐えて立つ少年。


「約束だ」


かすれた声。


「続きを……書け」


次の瞬間。


光が、彼を包み込んだ。


崩壊ではない。

消失でもない。


ただ

世界から、外れただけ。


装置の光が、静まる。


〈クロノ・ロック〉は、沈黙した。


世界の未来線は、解放された。


だが。


そこに、

アイゼンハワードの姿は、なかった。

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