エピローグ 未来へ癒す者たちの旅立ち
春の魔界は、少しだけ甘い匂いがする。
卒業証書を胸に抱えた
3年ONI組 全員卒業。
誰ひとり、欠けていない。
それぞれの旅立ち
門の前。
配属先の名が刻まれた封筒が手渡される。
焔丸
進路：魔界中央救命センター・初期救急部門（炎属性止血・蘇生担当）
一言：
「規律も理論も、先生に叩き込まれました。
次は“優しさ”で命を救います！」
ユミカ＝スノーリーフ
進路：魔界総合病院・小児病棟（氷結鎮静・発熱制御専門）
一言：「泣いてる子の熱も、心も……
そっと冷ましてあげたいんです」
オニグレン
進路：魔界災害救助隊・レスキュー部隊
一言：「考えるのは苦手っすけど！
重たい命は、全部オレが運びます！」
カグヤ＝ナースロッド
進路：魔界高度医療研究病院・集中治療部（ICU）
一言：「感情は切り離します。
でも命の重さだけは、絶対に忘れません」
ミミ＝パルト
進路：心霊・感情医療専門施設（エンパス治癒部門）
一言：
「この人、痛いって言えないだけ……
そういう声を、聞き続けたいです」
雷士
進路：魔界救急搬送部隊・高速治癒ユニット
一言：
「誰よりも早く行く！
……それで、誰かが助かるなら十分だ」
（※ユミカには最後まで言えなかった）
ジゾー丸（地蔵族）
進路：終末期医療・緩和ケア施設
一言：
「……待つ。
人が、話し出すまで」
プリム＝ハートナー
進路：魔界恋愛療法研究所（感情回復・対人治癒専門）
一言：
「恋は病気じゃないです！
……でも、治療は必要です！」
バオ＝クトゥルフ
進路：魔界小児専門病院・看護師
一言：
「こわくないよ。
包帯、やさしくするからね」
キリサメ兄妹（双子）
進路：魔界総合病院・チーム治癒科（双子連携ユニット）
一言（兄）：
「俺が前に出る！」
一言（妹）：
「違う、私が後ろ支える！」
（※同時に）
「……でも、一緒が一番強い」
門が開く。
生徒たちは、それぞれの世界へ歩き出す。
振り返らない者。
何度も振り返る者。
泣きながら笑う者。
最後まで残ったのは、さっちゃんだけ。
夕方の教室。
椅子は整然と並び、
騒がしかった日々が嘘みたいに静か。
さっちゃんは、
一番後ろの席に座る。
「……行っちゃったわね」
黒板を見上げる。
さっちゃん
「恋も……教育も……」
小さく笑って。
「……まだまだ、勉強ね」
足音
カタン。
ドアが開く。
エリオット
「やっぱり、ここだと思いました」
さっちゃん
「……帰ったんじゃなかったの？」
エリオット
「来年の準備です」
少し照れたように。
「……来年も、一緒に教えましょう」
さっちゃん
「……」
一瞬迷ってから、
そっと手を伸ばす。
エリオットの手を
握る。
「……はい」
二人の背後。
夕日に照らされた黒板には、
誰かが残した落書き。
『3年ONI組
さっちゃん先生
ありがとう』
さっちゃん
「……もう……」
涙は出るけど、
笑顔だった。
癒す者たちは、旅立った。
教える者たちは、また歩き出す。
未来へ。
『３年ONI組 さっちゃん先生１３ 魔界医療看護専門学校 癒せ直せ恋愛をせよ 』
ー完ー
