第7話 先生の恋は心電図みたいに波打つ
その告白は、
あまりにも突然だった。
場所は――
附属病院の休憩室。
夜勤明け。
コーヒーは冷め、空気は妙に静か。
エリオットが、白衣の袖をぎゅっと握る。
エリオット
「……さっちゃん先生」
さっちゃん
「何よ。
今なら採血も怒鳴りも無しよ」
エリオット
「……あなたが好きです」
沈黙。
心電図モニター
《ピ―――ッ……ピピピピピピピピ!!!》
さっちゃん
「ちょ、ちょっと待ちなさい!?
今、心電図おかしいわよ!?」
エリオット
「それ、先生のです」
さっちゃん
「はぁ!?」
ツノが真っ赤に点灯。
さっちゃん
「ちょっと!
何言ってんのよ人間!!
わ、私は450歳よ!?
未成年より未成年な見た目よ!?」
エリオット
「年齢は問題じゃありません」
さっちゃん
「問題だらけよ!!
倫理!年表!歴史!!」
完全パニック。
次の瞬間。
さっちゃん
「し、失礼しますッ!!」
ドン!
ガシャーン!
廊下を全力疾走。
エリオット
「先生!?
告白で救急要請は初めてです!!」
噂は秒速で広まった。
プリム
「聞いた!?
先生が告白されたって!!
恋愛療法、実践編よ!!」
焔丸
「さ、さっちゃん先生に不埒な感情を……
ゆ、許せん!!(でも気になる)」
ユミカ
「恋……
はぁ……(蒼井教授を思い出して溶ける)」
雷士
「お、お前今誰想像した!?
氷溶けてるぞ!?」
ジゾー丸
「……脈、乱高下」
一言で核心。
ミミ
「せ、先生に可愛いお洋服を……」
→サイズ合わず角で破裂
オニグレン
「恋は筋肉ッス!!
腕立てで告白力アップ!!」
→さっちゃん逃走
プリム
「先生、恋は素直さです!
“好き”って言えば――」
さっちゃん
「言えるかぁぁぁぁ!!!」
杖が唸る。
病院裏。
ルリ
「……ごめん。
私、あの時……」
マカ
「ううん。
私も感情で突っ走った」
二人、少し照れながら笑う。
マカ
「……また一緒に看護しよ?」
ルリ
「うん!」
背景で雷士が見守る。
雷士
「青春かよ……」
職員宿舎。
さっちゃん、鏡の前。
さっちゃん
「……メイク、ね」
プリムの資料を広げる。
「“恋はまず見た目から♡”」
さっちゃん
「……信用ならない」
それでも、試す。
アイシャドウ
角に引っかかって粉砕。
口紅
ツノに当たって斜め。
さっちゃん
「……医療器具の方が素直だわ」
鏡に映る自分。
赤いツノ。
少し潤んだ目。
さっちゃん
「……恋って、こんなに難しかったかしら」
廊下の向こう。
エリオットが、静かに立っている。
エリオット
「……返事は、急ぎません」
「でも
あなたを尊敬している気持ちは、本物です」
さっちゃん、何も言えず。
心電図モニター
《ピ……ピ……ピピッ》
不整脈継続中。




