第6話 緊急事態!魔界パンデミック
警鐘は、朝ではなく
夜明け前に鳴った。
校舎中に響く、緊急魔導放送。
「魔界全域で感染症発生。
コードネーム コロスゾ」
一瞬で、空気が変わる。
魔界全域でパンデミック発生
感染力が高く、
魔力循環を破壊する未知の病。
病院は満床。
医療者が足りない。
「魔界医療看護専門学校へ、
即時協力要請」
銀山教頭の顔は険しい。
「……学生を出すのは危険だ」
さっちゃんは、静かに一歩前へ出た。
「3年ONI組は行く」
「さっちゃん先生!?」
「彼らはもう“守られる側”じゃない」
ツノが、強く光る。
看護へ出動、3年ONI組
防護装備に身を包む生徒たち。
「怖い……」
カエデの声が震える。
「当たり前よ」
さっちゃんが言う。
「怖くない医療者なんて信用できない」
エリオットが頷く。
「でも……逃げない限り、君たちは医療者だ」
その言葉に、背筋が伸びる。
しかし現場は地獄
臨時治療所。
呻き声。
混乱。
絶望。
アトラスが叫ぶ。
「担架足りねぇ!俺が運ぶ!!」
三人分を同時に担ぎ、走る。
「重いの慣れてますから!!」
汗だくの笑顔に、患者が少し笑った。
泣き叫ぶ老魔族。
「もうダメだ……」
ルリは、そっと手を握る。
「大丈夫です。
今、呼吸を一緒にしましょう」
声は震えているのに、
手は離さない。
「……あなたは、ひとりじゃない」
患者の呼吸が、落ち着く。
医師が小声で言う。
「……いい看護だ」
カエデは、隔離室前で立ちすくむ。
(手が……動かない)
中から、うめき声。
思い出す。
血圧計を爆発させた自分。
さっちゃんの叱責。
「……感情に流されるのは、医療じゃない」
深呼吸。
消毒。
手技確認。
震える手で、処置を行う。
エリオットがそばで見ていた。
「……よくやった」
ぽん、と肩に手。
「今のは、立派な医療行為だ」
カエデの目に、涙。
数時間後。
生徒たちは、
床に座り込み、倒れ込む。
誰も喋れない。
魔力も、体力も、
すべて出し切った。
さっちゃん先生は、
その光景を見た瞬間
走った。
一人ずつ、
ぎゅっと抱きしめる。
「……よくやった」
声が、震える。
「本当によくやった……!」
ツノが赤く光り、
涙が止まらない。
「生きて帰ってきてくれて……
それだけで、先生は……」
生徒たちは、
何も言えず、されるがまま。
外では、
感染拡大がようやく抑えられ始めていた。
エリオットが、静かに言う。
「……彼らはもう、一人前ですね」
さっちゃんは、涙を拭い、
「まだよ」
でも、少しだけ微笑んだ。
「でも……誇らしい生徒たちだわ」
朝日が、
白衣と角を照らしていた。
【教師】
エリオット
人間界から来た新任教師
黒髪、眼鏡、白衣が似合いすぎる清潔感男子
身長178cm、やや細身
表情は柔らかいが、目元だけは医者の鋭さがある
【生徒たち】
焔丸
クラス委員長。炎属性の治癒術師。
真面目すぎて融通が利かないが、芯のある優しさが見える。
さっちゃんに憧れている初心者ファン。
ユミカ=スノーリーフ
氷属性の癒術士見習い。
見た目はクールだが中身はロマンチスト。
蒼井教授を見るたびにぽーっとしてしまう。
女子の中で“一番恋に早いタイプ”。
オニグレン
筋肉全振りのレスキュー担当志望。
力はあるが頭脳はゼロ。
「笑う救急車」と呼ばれている。
重症患者にも笑顔で対応できるのが長所。
カグヤ=ナースロッド
器用で優秀な現実主義者。
心霊や恋愛には興味ゼロ。
最もさっちゃんに似ていると言われる才女。
ミミ=パルト
小柄な獣人族の少女。
感情が強い患者の感情を読み取り、傷を癒す特技を持つ。
心優しく、クラスのマスコット的存在。
雷士
電撃治癒師志望の少年。
スピードと判断力に長けるが短気。
ユミカに片想いしているが、全く気づかれていない。
ジゾー丸(地蔵族)
動かない。
ほぼ喋らない。
でも誰よりも洞察力が鋭く、たまに核心をつく一言を言う。
プリム=ハートナー
“恋愛療法”専門家志望の少女。
患者に恋をさせて治す特殊能力の持ち主。
恋愛のプロとしてさっちゃんを指導しようとするが毎回怒られる。
バオ=クトゥルフ
異形の種族。見た目は怖いが性格は天使。
包帯交換が異常に上手い。
小児科志望。
キリサメ兄妹(双子)
息ぴったりの双子の治癒士。
実習では常に連携し、トラブル時に強い。
ただし兄妹ゲンカが多く、患者の前で言い争うことも。




