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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅 9 赤い月に消えるラスト・トリガー」

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第五話 ルージュ=ナイト起動!スカーの罠の真相

赤い月が、ゆっくりと都心に沈まないまま昇り続けていた。


魔都ルージュ=ナイト。

ビルの谷間から、突如として巨大な炎柱が立ち上がる。


ドォオオオオンッ!!!


「火災発生区域、拡大中! 制御できません!」

「魔力濃度が跳ね上がってるぞ!」

「避難ルートが全部炎で塞がれた!?」


軍の管制塔はパニックだった。


その混乱の中心で、

一人の男が無駄に胸を張っていた。


軍服を着崩し、金の肩章。

口髭を妙に整えた中年男。


ハルトン准将。


自称・“軍の切り札”。

実際は“軍が最も隠したい人材”。


「よし、落ち着け諸君!

 この大火災はスカーの仕業だ!

 ……たぶん!」


「“たぶん”って言ったな今!?」


周囲の部下が絶望の顔をした。


そこへ通信兵が駆け込む。


「し、指揮官! 例のラスト・トリガーを盗んだ容疑者として……

 アイゼンハワード元捜査官の名前が──」


「よしそれだ! それでいこう!」


「えっ、即決!? 根拠は!?」


ハルトンは胸を反らす。


「根拠?

 私の勘だ!」


部下Aがつぶやく。

「(この人が上司なの、つらい……)」


◆◆◆


一方そのころ


火の手が迫る路地裏を駆け抜けながら、

ルアーナが怒髪天だった。


「先生! あの無能准将が、今なんて言ってたか知ってます!?」


アイゼンが帽子を押さえつつため息をつく。

「どうせ碌でもないこったろうよ」


「容疑者ですってよ!? 私たちが!?

 “ラスト・トリガーを盗んだ犯人かもしれん!”

 だって! あんたらの脳みそ化石なの!?」


レイヴが笑い転げる。

「いや〜人間って面白いよなぁイヒヒヒヒ!

 目の前の炎より、的外れな疑いを最優先とは!」


リュカが不安げに振り返る。

「先生……どうするの?」


アイゼンは杖を突きながら軽く笑った。


「どうもこうも、決まってるさ。

 無能の処理は、できるやつがやるしかねえ。

 それが世界の理だ」


四人は軍に包囲される。


「元捜査官アイゼンハワード!

 あなたはラスト・トリガー盗難の容疑で──」


ルアーナが前に飛び出した。

目は完全に冷気。


「言っとくけどねぇ……

 私らより頭を使って話してよ。

 じゃないと文明開化の前に戻るわよ?」


兵士たちが後ずさる。


「(こ、こいつ……怖い……!)」


ハルトン准将が後ろからのそのそ現れた。


「ふん、若造の口のきき方ではないぞ!

 この天災のような火災、そして赤い月。

 全て貴様らの仕業と見た!」


レイヴが肩を震わせる。

「天災はお前の脳みそだろイヒヒヒヒ!」


ハルトンが怒鳴る。

「黙れ! 死神風情が!」


アイゼンが前に出た。


「准将。あんたみたいなのが現場を仕切るから……

 本物の悪党が喜ぶんだよ。

 もう手遅れかもしれんが、現実を見るんだな」


その瞬間。


ビル上空で、巨大な魔術陣が輝いた。


──ズォオオオッ!!


「でたな……スカーの本命だ」


炎は“自然火災”ではない。

街そのものを魔力炉心として使う巨大な魔術装置の一部。


火災はただの“偽の混乱”。

真の目的は、街を丸ごとラスト・トリガーの起動装置に変えること。


ルアーナが青ざめる。


「これ……本当に街が……消える!」


リュカが呟いた。


「止められるの、僕たちだけ……?」


アイゼンは帽子を深くかぶり、ニヤリと笑う。


「当たり前だろ。

 世界を救うのは、無能じゃなくて──

 働きたくない老骨と、優秀な若造たちさ。」


四人は炎の街を突破し、

スカーの本拠・ルージュ=ナイト制御塔へ向かった。


真っ赤な月が、その旅路を照らしていた。

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