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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅 9 赤い月に消えるラスト・トリガー」

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第四話 少年の記憶

アグラディア地下迷宮


最深部。

古びた鉄扉を、ルアーナが工具を使ってこじ開けた。


「先生! こっちです!」

「はいはい、若いのは元気だな……膝が泣いてるぞ」


合流した三人は、ひんやりした空気の部屋へ足を踏み入れた。


部屋の中央。

無機質な球体装置が、低く唸っている。


その瞬間、装置が赤く光り


キィイン……ッ!


壁一面に、古い研究所の映像が投影された。


白衣の連中。

白い手袋。

無表情の男たちが机に並べた試験管と……檻。


檻の中には小さな少年。

虚ろな目。

震える膝。

肩を抱きしめるように丸まっている。


「……ぼ、僕……?」

リュカの声が震えた。


映像の奥、黒いコートの人影がゆっくり近づく。


仮面。

深紅のライン。

鋭い眼孔。


仮面の術師・スカー。


ルアーナが息を呑む。

「リュカ……知ってたの?あの男を……」


リュカは首を振る。

だが目は映像から離れない。


罵声。

命令。

痛み。

叫ぶ幼い声。


映像が淡々と過去を暴き続ける。


リュカの拳が白くなる。

唇が震える。

「……僕は……捨てられたんじゃなくて……

 “作られた”……?」


その肩に、そっと手が置かれた。


アイゼンハワードだった。


「見る必要があったんだ、リュカ」

低く、深く、あたたかく。

「だがな過去は呪いじゃない。

 今を選ぶのがお前の力だ」


リュカの視線が、アイゼンの皺だらけの横顔に向く。


「先生……」


「おっと感謝はいらん。

 年寄りは説教くらいしか能がないんでな」


照れくさそうに帽子を下げるアイゼン。

ルアーナが涙をこらえながら笑う。


そこへ。


「おいおいおい、しんみりしすぎじゃねぇかイヒヒヒヒ!」

壁をぶち破ってレイヴが登場した。


「せっかく敵が記憶装置まで用意してくれたんだ。

 ありがた〜く利用して目的地に急ごうぜぇ?イヒヒヒヒ!」


ルアーナが呆れた顔で腕を組む。

「レイヴ、タイミングが最悪なんだけど」


「死神のタイミングはいつでも最悪だろイヒヒヒ!」


アイゼンが杖で床を軽く叩く。

視線はすでに“次”を見ていた。


「……映像は終わったが、残った魔術式がある。

 スカーは見せたい情報だけじゃなく──

 招待状もここに置いていきやがったようだ」


装置の裏側、赤い紋章が浮かび上がる。


《ルージュ=ナイト制御核》へのアクセスゲート


「やつは“見ろ”と言っている。

 なら行くしかないだろう」


アイゼンの言葉に、ルアーナとリュカは頷く。


レイヴは肩を回して楽しそうに笑った。

「よし! 世界の破滅を止めに殴り込みだァイヒヒヒヒ!」


四人は再び肩を並べた。


過去の呪縛を越え、

赤い月の中心へと向かうために。

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