第三話 アルマ・ホテル潜入!仮面の術師スカーを追え
アグラディア旧市街。
赤い月の光を浴びて、不気味に沈む廃ホテル「アルマ」。
入口の鍵は錆び、風が吹くだけでドアがきしむ。
「情報じゃ、このホテルの地下にスカーが仕掛けた“残響罠”があるそうです」
リュカがタブレットを操作しながら囁く。
「……残響罠だァ? 嫌な名前だ」
アイゼンハワードはため息をつき、杖を肩に担いだ。
「年寄りを夜の散歩に連れ回すなよ。膝が死ぬ」
「先生、文句ばかり言ってます!」
ルアーナが笑いながら背中を押す。
ドアを開けた瞬間だった。
バチィンッ!!
床が一斉に光り、魔術式が展開。
次の瞬間、ホテル全体が上下に反転するような揺れが走った。
「なっ……!」
アイゼンが杖を突き出すも、光が飲み込む。
三人と一匹…いや、一人(死神)は、
光の裂け目に吸い込まれ、四つの方向へと吹き飛ばされた。
◇◇◇
ルアーナ&リュカ:暗黒迷宮!
「リュカ、そっち無事!?」
「ルアーナ先輩こそ!僕、着地で1回死にました!」
二人が落ちたのは、
電力を奪う“魔力遮断迷宮”。
ライトも魔術も使えず、まるで古代の罠そのもの。
「じゃあ、ここは……科学で行きましょう!」
リュカは嬉々として工具箱を広げる。
「わ、わかった。走りながら説明お願い!」
壁が動き、床が抜け、天井から矢が飛ぶ。
ルアーナは軽やかに跳ね、リュカは機械式のロックを次々破壊。
「先生が見たら“危なすぎるぞお前ら”って怒られそうね」
「でも先生、僕らがこういうの得意なの知ってますから!」
二人は笑いながら暗闇を切り裂いた。
◆◆◆
死神レイヴ:罠を破壊しながら爆走!
「お・も・て・な・し、最悪だなァ……イヒヒヒヒヒ!」
落ちた先は巨大な回廊。
刃が回転し、炎が吹き、落石が降る。
普通なら死ぬ。
しかし相手は“死神”だ。
「こんなの挨拶代わりじゃねえかイヒヒヒヒ!」
鎌を一振り。
罠も壁もまとめて粉砕。
「スカーとか言ったなァ? このもてなし、気に入らねぇ。
会ったら正座させて説教だからなァイヒヒヒヒ!」
爆音と破壊の嵐が迷宮に響き渡った。
◆◆◆
薄暗い部屋。
部屋の中心には灰色の魔力陣がゆっくり回転していた。
「……分断の術式、か。性格の悪い奴だな」
アイゼンは膝を鳴らしながら、魔術陣へ手をかざす。
「これだけの術式、並の術師には組めん。
スカー、お前、ただの窃盗犯じゃないな」
魔力陣の奥に、血のような赤い印が一つ浮かび上がる。
《ルージュ=ナイト》
「……赤い月と同じ名か。繋がってやがる」
その瞬間、背後の壁が震えた。
「ほう。先に進めってか?
ったく、老骨をこき使いやがる」
アイゼンは杖をつき、
一人、闇の奥へと歩みを進めた。
分断された四人の運命は、同じ一点へと収束していく。
だがその先で待つのは、仮面の術師スカーの“本当の意図”。
赤い月は静かに光り、
地上の誰も知らぬまま、災厄の時が近づいていた。




