第二話 影の兵器《ラスト・トリガー》
赤い月の真下にある魔都
ルージュ=ナイト。
カジノ・ナイトクラブ・異能屋敷……
欲望と裏社会のすべてが詰め込まれた混沌都市。
その裏路地にある、古びた酒場。
看板には“ベルカッド亭”の文字。
ベルカッドとの再会
扉を開けた瞬間、濃い煙草の香りが漂う。
ベルカッドはグラスを磨きながら、
アイゼンをちらりと見て鼻で笑った。
「また世界を救いに来たのか、老魔導捜査官」
「救う気などないわ。
儂はただ……世界が勝手に壊れるのを許さんだけじゃ」
「言い訳は相変わらずだな」
ベルカッドの声は冷たいが、
目の奥にはわずかに懐かしさが灯っていた。
ルアーナが身を乗り出す。
「ベルカッドさん!
“魔力終末装置”について知ってる?」
「知ってるさ。
盗まれたんだろ?」
一同が息を呑む。
ベルカッドは低く続けた。
「奪ったのは“仮面の術師”。
やつは赤い月と共鳴させるつもりだ」
ルアーナ
「共鳴って……どうなるの?」
ベルカッド
「簡単だ。世界が“ひっくり返る”」
リュカは青ざめて尻もちをつきそうになる。
死神レイヴは楽しそうに笑った。
「おお〜〜面白くなってきたじゃないかイヒヒヒヒ」
アイゼンは額を押さえて小さくため息をつく。
「……老骨に世界の尻拭いをさせるなよ」
店のドアが乱暴に開く。
「よぉぉ〜〜し、ついに見つけたぜ!!
“倒したい男ランキング第1位”、アイゼンハワード!!」
銀色のコートを翻し、
賞金稼ぎ リーヴァ=クロフォード が登場。
ルアーナは即座に距離を取る。
「来なくていいから帰れ!」
「ひでぇなぁ博士ちゃん。
俺は君の才能を高く評価して――」
「評価しなくていい!!」
リュカは完全にビビっている。
「せ、先生……あの人、強そう……」
「うむ、強いぞ。問題は“面倒くさい”ところじゃがな」
リーヴァはカウンターに腰かけ、
アイゼンを指差してニヤリと笑う。
「なぁ老人。
スカーがラストトリガーを持って逃げたってことはよ……
この街のどこかに“巨大オークション”が開かれるって話だ」
ベルカッドが顔をしかめる。
「……おい。どこで聞いた」
「さあな? 企業秘密だ」
ベルカッドの目が細くなる。
レイヴがくすくす笑う。
「おやおや〜?
また誰かの“嘘”を嗅ぎつけたみたいだねぇ? イヒヒヒヒ」
ベルカッドは一瞬だけ沈黙し、
ぽつりと言う。
「……オークション会場は“アルマ・ホテル”。
屋上に赤い月の魔力が収束してる。
そこが奴らの本拠地だ」
アイゼンは立ち上がる。
「よし。潜入するぞ」
「ちょっと待てよ老人、俺も行くぜ!!
スカーの首……高値がつくんだ」
ルアーナ
「勝手にすれば」
リーヴァ
「つれないなぁ」
レイヴ
「あーあ、面倒なのが増えたイヒヒヒヒ」
そして作戦開始
赤い月を仰ぎながら、
一行は怪しく光る超高層ホテルへ向かう。
ベルカッドが最後にひとこと。
「アイゼン……
気をつけろ。
スカーの背後には“もっと危険な奴”がいる」
アイゼンは振り返らずに手を振った。
「ならばそいつをぶん殴って帰るだけじゃ」
赤い月は不吉に揺れ、
世界がゆっくりと“終わり”へと歩き始めていた。




