プロローグ 伝説の暗殺兵器 《ラスト・トリガー》
【オープニング ナレーション】
さあ行くぜ。
今夜の主役は、
老練の魔導捜査官アイゼンハワード。
天才を自称する科学少女ルアーナ。
不器用で、でも誰よりも優しい少年リュカ。
そして、“死神”と囁かれながら、
誰にも素顔を見せない謎の青年レイヴ。
旅の行き先はいつだって風まかせ。
しかし今回も違った。
月が、赤く染まった。
世界の裏社会ではこう語られている。
血の月の夜にだけ起動する、伝説の暗殺兵器
《ラスト・トリガー》。
その起動キーを盗んだのは、
かつてアイゼンの相棒だった女スパイ・リュシア。
「……これが最後よ、アイゼン」
怯えた瞳の奥に、何かを決意したような影。
意味深な言葉だけ残し、赤い月の闇へと消えた。
追うアイゼン。
追われるアイゼン。
世界中の諜報機関が、一斉に動き出す。
舞台は、永遠に赤い月が沈まぬ魔都
“ルージュ=ナイト”。
カジノ。
超高層ホテル。
屋上プール。
地下オークション。
眩い光と快楽の裏には、
冷たく鋭い罠が張り巡らされていた。
そこでアイゼンは出会う。
“死んだはずの男”モーガン将軍。
「ラスト・トリガーはな……
撃つ者の“記憶”を対価にする」
つまり、引き金を引いた瞬間、
その人物の“人生そのもの”が消失する。
失われるのは力ではなく存在。
そして今夜も赤い月は、
静かに、確実に、
世界の終わりを照らしていた。




