第七話 恋の大事件、心が歌えない！

文化祭《ヘルフェス》まであと1日。

魔界音楽専門学校はどの教室からも音が漏れ、

熱気と緊張が入り混じっていた。

しかし

その中心であるはずの “地獄の青春☆ハートブレイカーズ” は、

完全に空中分解寸前だった。

ミナ

「……私、歌わない方がいいのかな……」

リーフ

「えっ！？　なんでそんな結論に……！」

ミナ

「ゼッドが…避けてるの。

　一緒に歌うと……彼の迷惑になるのかなって」

ゴブル（ビート刻みながら）

「それは違うと思うでゴブル〜…」

ハルド（腕組み）

「ゼッドはそんなヤツじゃない。

　ただ……アイツ、感情が不器用だからな」

（※筋肉で語るタイプ）

ゼッドは屋上で悶えていた

「うおおお……好きすぎて……声が出ねえ！」

ユリエル（堕天使科）

「アンタ、恋が重症すぎるわよ？」

ゼッド

「ミナを見ると胸がすげえ鳴って…

　目が合うと歌詞が全部飛んで…

　練習になんねえんだよぉ！！」

ユリエル

「それを本人に言わずに逃げるとか、

　ただの“こじらせ魔族男子”でしょ」

ゼッド

「あ゛あ゛〜〜〜〜〜」

控室の前。

ミナ

「ゼッド…私、そんなに迷惑だった？」

ゼッド

「違う！！　全然違ぇ！！」

ミナ

「じゃあなんで避けるの……？」

ゼッドの心臓、バクバク。

ミナの瞳がうるむ。

ゼッド（耐えきれず叫ぶ）

「好きすぎて怖かったんだよ！！！」

ミナ

「……え？」

ゼッド

「お前の歌声も、笑顔も、全部、

　俺の中でデカすぎて……

　どう向き合えばいいか分からなかった！」

ミナの涙が、一筋落ちる。

ミナ

「……迷惑なんかじゃないよ。

　私ね、ゼッドと歌うの……

　すごく、好きだから。」

さっちゃん先生、ついに出動

バァァン！！（扉が吹き飛ぶ）

さっちゃん

「青春ど真ん中ァァァァ！！！

　歌はねぇ……

　恋の“不器用”を救うんですよ！！」

（※背後でベルガ主任がツッコむ）

ベルガ

「だから扉を吹き飛ばすなと言ってるだろう！！！」

さっちゃん

「さ、ミナ、ゼッド。

　目ぇ閉じて。

　声で答えなさい。」

2人はゆっくり息を吸う。

ハミングが重なる。

震えていた声が、そっと寄り添う。

ミナ

「♪あなたと歌うと胸が温かい…」

ゼッド

「♪離れたくねぇ、ずっと隣がいい…」

合わさるハーモニー。

涙が光り、控室に優しい魔力が満ちる。

ハルド（腕を拭いながら）

「……くぅ……青春……！」

ゴブル

「ハーモニーが甘すぎて糖尿になるでゴブル」

リーフ（淡々）

「作曲的には非常に良い素材……（メモ）」

ユリエル

「いや泣くでしょこれ……」

さっちゃん先生

「よし！！ 全員仲直り！！

　ヘルフェスまであと1日、

　ここからギア上げますよぉぉぉ！」

全員

「うおおおおおおお！！！！」

こうして、

バンドは再びひとつに戻った。

文化祭前夜。

恋も、歌も、心も

一番熱くなる瞬間が、始まろうとしていた。