第一話 鬼教師、音楽学校に殴り込む！

魔界音楽専門学校《ヘル・ミュージック・アカデミー》。

黒曜石でできた巨大校舎の前に、突如として赤い閃光が走った。

ドォォォォン！！！

地響きと同時に、巨大な鬼が着地する。

新任教師・さっちゃん先生（450歳）。

「みなさぁああん！！

今日からこの学校で！歌を！恋を！青春を！

ビッシバシしごいていきますううう！！」

その声はあまりに強烈で、

校舎の窓が一斉にビリビリ震え

音楽棟の鐘が勝手に鳴り出した。

生徒たちは阿鼻叫喚。

「待って！声圧で鼓膜が──っ！」

「誰だよ！？こんなの呼んだの！！」

特に

“人魚族の歌姫候補”ミナは、一番音に敏感だった。

「ひゃ……ひゃあああっ！？

これ……音圧……深海クラス……！」

バタン！

ミナ、気絶。

「うわぁぁあ！？ミナ先輩がサウンドブレイクで倒れたー！」

後ろの方で、黒翼を広げた悪魔族ボーカル・ゼッドが呟く。

「……やべぇ。あの鬼教師、PA機材より強い。」

そのとき、舞台袖――いや、校舎の影から

涼しい顔でイケメンが現れた。

ボーカル科主任・ベルガ＝オルフェウス。

「……初日から校舎を壊すのはやめてくれ。

あなたの声量、完全に規格外だ。」

「まぁ！主任さん、私まだ本気出してませんのよぉぉ！」

「出すな。」

ベルガの即答に、生徒たちは神を見た気がした。

ホームルーム開始！

さっちゃん先生が、ドンッと教壇に立つ。

「ではまず、生徒のみなさん！

自己紹介をしましょうううう！」

鼓膜をかばう生徒たちが順番に前へ。

アマネ（17）

金色の髪を揺らし、内気そうに前へ出る。

「ア、アマネです……ボーカル科。

歌うのは好きですが……恋は、苦手で……その……」

（シグマくん……今日もかっこいい……）

と、隣の席のシグマをチラ見して赤くなる。

シグマ（18）

ギターを背負ったクールな男子。

「……シグマ。ギター担当。

以上。」

（アマネ……今日も可愛いな。でも言えねぇ……）

と、視線をそらす。

ルカ（17）

ダンス科の看板男子、生粋の陽キャ。

「ルカでぇす！

アマネちゃんの歌、いつも鳥肌立つよ！

俺、応援してるからね！」

（でも本当は好きだけど……言わなくていいや）

と笑って手を振る。

カリン（18）

クールな作曲科女子。ヘッドホン常備。

「カリン。曲を書きます。

恋愛とかは……特に、興味は……」

（シグマ……今日も静かで素敵……）

と、ほんのり赤い。

ヒメノ（17）

王族アイドル科の姫キャラ。ドレスで登場。

「わたくし、ヒメノ・フォン・ルミナリエですわ！

ルカ様、今日もステキですこと！」

ルカ「お、おう……ありがとう。」

ガイア（19）

音響エンジニア科の機材オタク。

「ガイア。……以上。

（カリン可愛い……けど話しかけられん……）」

メロディ（16）

打楽器科の天才少女。元気いっぱい。

「メロディです！叩くの大好き！恋愛は知らない！」

そして

最後にさっちゃん先生が、ズイッと前に出た。

「みなさん……

よぉ～～～～～～～～く聞いてください。」

息を吸い込む。

肺が“ブラックホール”みたいに空気を吸う音がした。

ベルガ「やめろ、やめろ、やめろ。」

さっちゃん「歌とはぁぁぁぁぁ――！！！」

ーーーーーバコォォォォォン！！！！！

黒曜石の床が少し割れ、全員の髪が爆風で逆立つ。

「魂で！！！殴るものですうううううう！！！！！」

生徒一同

「（こ、殺される……！！）」

ベルガ（……今年も波乱確定だな）

こうして、さっちゃん先生の

“音と恋の地獄（？）の授業”が幕を開けた。