プロローグ さっちゃん、魔界音楽専門学校へ赴任?!!
さっちゃん、魔界音楽専門学校へ赴任?!!
魔界の片隅
黒曜石を削り出して建てられた、天を貫くような巨大建築物があった。
その名も、
魔界音楽専門学校。
ロックの火炎を操るドラゴン族のギタリスト。
百年に一度の奇跡の声を持つ吸血鬼シンガー。
影の中からビートを刻む妖狐のドラマー。
さらには、音響機材オタクの人間族まで。
魔界最大の“音楽の坩堝”として、
歌手、ミュージシャン、作曲家、DJ、音響エンジニア……
あらゆる音楽の道を志す者たちが、青春と魂を燃やす場所である。
そんな歴史ある名門校に。
校長の机に、ひときわ雑な辞令書が叩きつけられた。
「新任教師:3年ONI組担任 さっちゃん先生」
…え?
なんで音楽学校に鬼の先生が……?
翌日。
黒い雷雲を割って、巨大な赤い影が空を横切った。
地響きを立てて校庭に降り立ったのは――
地上最強(自称)・鬼教師。
歌にも恋にもツッコミにも容赦なし。
3年ONI組の破壊級担任、さっちゃん先生であった。
「みなさぁああん!!
今日から音楽を!恋を!青春を!
ビッシバシ!しごいていきますうううう!!!
私、歌には自信が……ありまっすうううう!!」
校庭に響き渡った第一声は、
鼓膜を揺らし空気を震わせ、
黒曜石の校舎の一部をわずかにヒビさせたという。
生徒たちはざわめいた。
「え、鬼が来た……」
「音楽学校なのに、なんで鬼教師?」
「てか今の声、PA壊れるレベルじゃね?」
「誰だよ、こんなの呼んだの……」
そのとき――
校舎の上からひらりと黒いコートが舞い降りた。
魔界ボーカル科主任、ベルガ=オルフェウス。
長髪を揺らしながら、無表情で言い放つ。
「……音、デカすぎ。
チューニングという概念を学んでから喋れ。」
こうして
鬼教師 × 音楽エリート集団
という、前代未聞の組み合わせで始まる
《3年ONI組 さっちゃん先生12
魔界音楽専門学校 ― 歌って踊って恋愛だー!》
幕は、派手に、荒々しく、
そしてなぜか恋の気配を含みながら上がったのであった。




