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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅8 炎の記憶— 永遠のメモリー」

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第10話 記憶の未来へ

ヴァルガとアイゼン、炎帝決戦。


浮上した記憶塔《オルド=アーカイブ》最上階。

渦巻く記憶エネルギーが空を裂き、

塔そのものが巨大な「記憶の炉」と化していた。


中央には、エリシアの“保存された肉体”が漂う。

彼女を中心に、過去と現在の記憶が奔流となって溢れる。


その前で、

炎の大臣ヴァルガと

老魔導捜査官アイゼンハワードが向かい合う。


静寂のあと、

世界は爆ぜた。


炎帝ヴァルガの“記憶燃焼術”


ヴァルガが手を振り下ろすと、

黒い炎が竜のようにうねり、床を灼き割った。


「記憶を燃やす炎だ……!

 この炎は貴様の“後悔”を餌に強くなる!」


黒炎はアイゼンの足元へ迫り、

触れた瞬間、記憶が弾けた。


崩落する研究塔。

泣き叫ぶエリシア。

伸ばした手が、届かない。


アイゼンの脳裏に“敗北の夜”が逆流する。


「どうしたアイゼン!」

ヴァルガは炎をさらに強める。

「自分の罪に焼かれろッ!!」


記憶の幻影に心を奪われれば、黒炎は止まらない。

塔の天井が崩れ、炎が暴れ狂う。


しかしアイゼンは、

炎の中でニヤリと笑った。


「……若造が。俺を“後悔の炎”で倒そうなど、1000年早いわ」


アイゼンは崩れゆく床に杖を突き立て、

周囲に渦巻く“記憶エネルギー”を吸い上げた。


「ヴァルガ……。

 お前は知らんだろう。

 記憶は炎より強い。

 忘れたいほどの痛みほど、俺たちは抱えて生きていく」


青白い光がアイゼンの杖に集まり、

周囲の黒炎を押し返す。


ヴァルガの目が見開かれる。


「馬鹿な……記憶を“力”に変換するだと!?

 そんな魔導は存在しないッ!」


「存在しないなら、作ればいい。

 そう教えたのは、エリシアだ」


その名を聞いた瞬間、

ヴァルガの愉悦に歪んだ表情が怒りに染まる。


「エリシア……!

 あの女の理想主義がどれだけ邪魔だったと思っている!」


ヴァルガは両腕を開き、全身を黒炎で包む。


「貴様が愛した女の結末を見せてやる……!!

 “獄炎記憶陣ヘル・アーカイブ”!!」


塔全体の記憶エネルギーを吸い込み、

黒炎が巨大な“記憶の獅子”となって咆哮した。

周囲の空間さえ焼き潰す最悪の術。


床が砕け、空が裂ける。


その時、

浮遊したエリシアの保存身体から、

淡い光とともに“幻影”が現れた。


揺れる銀髪、かすかな微笑み。

数十年前と変わらない、研究室で見せた穏やかな瞳。


「アイゼン……」


その声だけで、

錆びついた鎖が、音を立ててほどけていく。


「あなたは過去のせいで立ち止まる人じゃない。

 ずっと前から……

 あなたが見ているのは“未来”だったわ」


幻影の手がアイゼンの胸に触れる。

溢れるのは罪悪感ではなく、

積み重ねた日々の温もり。


「ありがとう……エリシア」


アイゼンの身体から爆発的な青い光が放たれた。



◇◇◇



「ヴァルガァァァァァ!!」


アイゼンは杖を空に掲げ、

記憶エネルギーを一点に収束させる。


「炎で焼けるのは過去だ!!

 だが、“未来”は焼けぬ!!」


杖先から放たれた光が塔全体に反射し、

無数の“記憶の欠片”が飛翔する。


幼い日の笑顔、研究室での議論、

仲間たちと旅した時間……

全てが光になり、アイゼンの背に羽のように広がる。


「これが……俺とエリシアの“最終式”だッ!!

 記憶魔導アーク・フューチャー!!」


放たれた青い奔流は、

ヴァルガの獄炎獅子を一瞬でかき消し、

黒炎の鎧を破り、

ヴァルガの胸へ直撃した。


ヴァルガ

「な……馬鹿な……記憶ごときが……

 炎帝である私を……!」


アイゼン

「記憶“ごとき”じゃない。

 俺の人生そのものだ!!」


ヴァルガは絶叫しながら光に包まれ、

記憶の炎ごと崩れ落ちた。


塔は揺れ、外の世界に静けさが戻る。


アイゼンは崩れゆく塔の中心で、

エリシアの保存身体にそっと触れた。


エリシアの幻影はやわらかく微笑む。


「生きて……アイゼン。

 あなたの未来は、まだ終わらないわ」


光となって消えていく彼女――

アイゼンの瞳から、静かに涙が伝う。


ルアーナ、リュカ、レイヴ、そしてノアが駆け寄る。


ルアーナ

「おじいちゃん……終わった?」


アイゼン

「……ああ。

 長かった。

 ようやく……ここまで来た」


ノアはアイゼンの手を握る。

その瞳には、エリシアの面影がほんの少し揺れていた。


ノア

「未来……一緒に見に行こ?」


アイゼンは笑う。

過去には戻れない。

だが未来は、確かに続いている。


「行くさ。

 俺たちの“旅路”は、まだ終わらんよ」


浮かぶ記憶塔がゆっくりと崩壊し、

新しい朝日が地平線を照らした。


こうして、

老人アイゼンハワードの贖罪と後悔は終わり、

新たな“記憶の未来”が始まった。




ノア

年齢:12〜13(推定)

職業:不明

特徴:記憶が名前以外ほぼゼロ

弱点:自分の存在理由

役割:

・“無音の炎”に唯一耐えた少女

・のちにエリシアの記憶断片が宿る

・世界の運命を左右する重要キャラ


エリシア・フロスト

年齢:没時30代前半

職業:天才魔導技師

特徴:穏やか・理性的・強い芯

過去:アイゼンの恋人

役割:

・40年前の事件の中心人物

・死んだはずだが“記憶”がノアに残る

・事件の真相を握る存在


敵(イグニス帝国関連)

ヴァルガ・イグニス

年齢:50代

職業:イグニス帝国 軍事大臣

特徴:冷酷・計算高い・黒炎の使い手

能力:記憶燃焼術(記憶を燃やして力にする)

役割:

・40年前の真犯人

・アイゼンの過去を踏みにじった張本人

・今回の事件を再起動させた男


パンドラ博士

年齢:40代半ば

職業:異世界バイオ魔術学者

特徴:黒紫ローブ・奇妙な笑い「フヘヘ」

役割:

記憶抽出装置メモリア・コードの開発者

・エリシアの遺体を保存した張本人

・ルアーナと科学バトル


死神勢力

ラルグ・マグナム

年齢:数百歳

職業:元死神

特徴:冷酷・規律の鬼

弱点:レイヴの“友情”概念

役割:

・レイヴに「死神の仕事に戻れ」と迫る

・ノアの存在に警戒

・最終局面でレイヴを揺さぶる黒い影


その他(舞台・国・組織)

イグニス帝国

北方の魔導軍事国家。

“レッド・メモリー事件”が起きた地。


アウロラ・ラボ(科学都市)

記憶を商品化する狂気の研究都市。

パンドラ博士が支配している。


オルド=アーカイブ(廃研究塔)

アイゼンとエリシアが共同研究していた場所。

物語終盤の舞台。


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