表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅8 炎の記憶— 永遠のメモリー」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1423/1526

第5話 アイゼンとエリシア、永遠の研究棟

北方の荒野に、黒い塔が一本だけ突き刺さっている。

《オルド=アーカイブ》。

アイゼンとエリシアが青春と狂気を捧げた研究塔だ。


霧が薄く漂い、塔の影が揺れる。


「よう、だいぶ古びてんな。まるで“元カノの部屋”に入るみたいな空気だぜ」

リュカの軽口が、妙に響く。


アイゼンは沈黙したまま、扉に触れた。

錆びた扉は、まるで長い眠りから目を覚ましたように、ぎぃ…と開く。


廃研究棟の内部へ


散乱する紙束、半壊した魔導設備、焦げた床。

しかしどれも“燃えていない”。


「無音の炎……“音のない火災”だ」

ルアーナが空気を読み取り、眉をひそめる。


塔の奥へ進むほど、空気は冷えていく。

ときおり、二人の若き日の写真が落ちていた。


・白衣のエリシア

・横で不器用に照れるアイゼン

・研究資料を抱えた楽しげな二人


ルアーナは写真を拾い上げ、そっと微笑んだ。


「こんな表情できたのね」


アイゼンは返事をしない。

ただ、かすかに唇が震える。


研究室の最奥。

壊れかけた魔導端末が、ひとつだけ光を放っていた。


ルアーナが解析すると、映像が浮かび上がる。


そこに映っていたのは、過去のエリシアだった。


「アイゼン、もしこれを見ているなら――

 私はやっぱり、あなたのことが……」


映像は揺れ、ノイズで途切れる。


「“無音の炎”は失敗だった。

 記憶を守るはずの術式が、街から記憶を奪ってしまった。

 もし再び起きたら…アイゼン、あなたが止めて」


そして最後に、彼女は微笑んだ。


「私は、あなたの未来を信じている」


映像はそこで止まった。


重い沈黙が流れた。

ルアーナはそっと彼の横顔を見つめる。


「あなたはまだ、エリシアを愛しているのね」


アイゼンは答えない。

だが、肩が震えている。


すると、塔全体がわずかに震えた。

天井の残骸が落ち、レイヴが舌打ちする。


「……来るぞ。ヴァルガの“記憶燃焼術”の残滓だ」


黒い炎が塔の奥から現れ、低く唸るように広がっていく。


アイゼンは一歩前に出る。


「エリシア…お前の真実を、必ず取り戻す」


その声は、“炎を恐れない男”の声だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ