第4話 ヴァルガの炎とアイゼンの罪
イグニス帝国軍の心臓部、紅蓮の軍務院。
そこに、ひとりの男が立っていた。
燃えるような赤髪。
漆黒のマント。
そして瞳の奥に宿る、冷酷な光。
イグニス帝国軍事大臣
ヴァルガ・アドラメレク。
ヴァルガ=エン=ドラウト
年齢:不明(見た目は30代後半)
職業:イグニス帝国 軍事大臣
特徴:赤い軍服、獰猛なカリスマ
能力:炎の魔法と精神支配を合わせた「記憶燃焼術」
目的:国民の記憶を統制し、完全支配国家を作ること
この男の登場が、
アイゼン一行の運命を大きく狂わせていく。
ヴァルガ vs アイゼン、因縁の再会
ヴァルガ
「久しいな、アイゼンハワード。
まだ生きていたとは驚いたよ」
アイゼン
「お前こそ、よく大臣などという椅子に収まったな。
椅子の方が泣いてるぞ」
ヴァルガは笑わない。
代わりに右手をかざした。
ボッ……!
空気も揺らさぬ“無音の炎”が掌に宿る。
ルアーナ
「これ……! 現場の炎と同じ……!」
ヴァルガ
「無音の炎?いや正確には、“記憶燃焼術”。
炎で物質を焼かず、“記憶”だけを燃やす魔導だ」
リュカ
「だから建物は無傷で……人の記憶だけが……」
ヴァルガ
「察しが良いな、少年」
そして彼はゆっくりとアイゼンに告げた。
「40年前の“あの事件”も、
君の恋人が死んだのも……
すべて君が守れなかったからだ。」
部屋の空気が凍りついた。
アイゼンの拳が静かに震える。
ルアーナ
「アイゼン……どういうこと?
恋人って……」
アイゼン
「……言いたくなかったが、もう逃げられんな」
煙草を落とし、静かに語り始めた。
40年前の“無音の炎事件”。
アイゼンとエリシアが、世界初の研究に従事していた頃。
◇◇◇
【アイゼンとエリシアの過去編】
天才同士の出会い
「二人で世界を変えよう」
若きアイゼン。
黒髪に鋭い目、そして野心の塊。
研究塔《オルド=アーカイブ》にて、
優しい笑顔の女性が迎える。
エリシア・フロスト
「あなたが魔導研究官?
アイゼン・ハワード」
アイゼン
「……君がエリシア?
この歳で天才技師って噂の」
エリシア
「噂じゃないよ。本物だよ?」
二人は最初から歯車が噛み合った。
魔導と科学の融合
“記憶を安全に保存する術式” を研究する日々。
夜通し語り合い、喧嘩し、笑い合い、
いつしか離れられない存在になった。
記憶研究の“闇”へ
しかし、研究はある壁にぶつかる。
エリシア
「記憶抽出の際、“音”が発生するのが問題ね……
もし音さえ消せれば、安全に移せるのに」
アイゼン
「音を“消す炎”を作ればいい。
炎でありながら、物質を燃やさず、
記憶だけを抽出する炎を」
エリシア
「……やってみる?」
運命の日
二人は禁忌の魔術を組み合わせた。
それこそが “無音の炎” の始まりだった。
しかし。
装置が暴走した。
無音の炎は、研究棟ごと飲み込み、
記憶を吸い上げる怪物となった。
エリシアは叫んだ。
エリシア
「アイゼン、逃げて!
あなたまで巻き込まれる!」
アイゼン
「バカ言うな! 一緒に出るんだ!」
エリシアはほんの一瞬、
悲しそうな笑みを浮かべた。
「……あなたを守れるのは私だけ。
だから、“私の未来”を守らせて」
そして自ら炎の核心に飛び込み、
装置を停止させた。
そのまま、帰ってこなかった。
世界は彼女を
“暴走実験の首謀者”として処理した。
アイゼンは真実を語らず、
すべての罪を一人で背負った。
◇◇◇
ルアーナ
「そんな……!
エリシアさんが、あなたを……守るために……?」
リュカ
「でも、記録じゃエリシアさんは悪人と……」
レイヴ
「歴史に真実は書かれない。
書くのはいつも、都合のいい連中さイヒヒヒヒ」
ヴァルガが冷たく嗤う。
ヴァルガ
「そう、真実などどうでもいい。
結果として一人の天才が死に、
イグニスはその技術を“回収”した。
今回の事件は、その続きに過ぎん」
アイゼン
「……ヴァルガ。
お前が本当に欲しいものはなんだ?」
ヴァルガ
「世界だよ。
記憶を支配する世界をな。」
そして大臣は告げた。
「この事件の本当の黒幕に会いたければ
《オルド=アーカイブ》へ来い。」
それは、すべてが終わった場所。
そして今、すべてが始まる場所。




