第4話 砂嵐の都市と亡霊の迷宮
砂漠のど真ん中。
地図にも時々しか載らない砂嵐都市。
空は赤く淀み、ビルは半分砂に飲まれ、
吹き荒れる砂嵐は “王冠の呪い”の残滓 で、天気ですらまともに制御できない。
そんな都市へ
砂の中から四つの影
アイゼンハワードは砂を払いつつ、
老人らしいぼやきを漏らす。
「……砂ばっかりだな。若い頃は砂漠の一つや二つ、鼻歌で渡れたんだがなぁ」
ルアーナ「先生、それ何十年前の話です?」
リュカ「……ぼ、僕、もう目が開けられない……砂が……!」
死神レイヴ「イヒヒヒッ、こういう場所はいいねぇ。
“死と幻覚”が混ざる匂い、ボク好みだぁ……!」
アイゼン
「悪趣味なやつめ」
だが四人とも、どこか胸騒ぎを感じていた。
砂嵐都市は“何か”を隠している。
王冠の欠片――それに触れた魔力が、この街を狂わせているのだ。
そして、その気配は確かに“近い”。
情報屋の巣は砂と嘘の匂い
市場は喧騒そのもの。
盗賊と商人と詐欺師が入り乱れ、砂にまみれながら品物を売り叫んでいる。
アイゼン
「さて……この街のウワサに詳しいヤツを探さすか」
ルアーナは計測装置を取り出し、ピピッと鳴らす。
ルアーナ
「先生、やっぱり街全体に“精神干渉系魔力”が飛んでます。
王冠の欠片の波長と一致してる……!」
アイゼン
「ほぉ、こりゃ本物だな」
一方リュカは、混乱して倒れている子どもたちに水を配る。
リュカ
「この街、みんな不安で……。
王冠の魔力が、心をざわつかせてる……」
死神レイヴは笑う。
「イヒヒヒ……いいねぇ、街中がちょっとずつ“壊れていく”感じ。
でも原因は――あっち、だよ」
指さした先には、裏路地へ続く黒い裂け目。
裏通りに入った瞬間、世界が“ゆがんだ”。
アイゼン「……!?
ルアーナ、リュカ、レイヴ。位置を崩すな――」
その声より早く、白い煙が漂った。
リュカ「っ……頭が……」
ルアーナ「だ、だめ……先生……幻覚……視界に……侵入……」
レイヴ「こりゃあ、“高位幻術師”の匂いだね。イヒヒヒヒ」
煙の中心に“影”が現れた。
黒い仮面、鏡のような目、声は無機質。
ヴァイス・シャドウ
「ようこそ。砂嵐都市へ。
王冠の欠片を狙う旅路……ここで終わってもらう」
ルアーナが一歩、前に出る。
ルアーナ
「……あなたが……王冠の欠片を……?」
眼は焦点を失い、完全に幻術に取り込まれていた。
アイゼン
「ルアーナ!戻れ!」
だが幻術は強力で、ルアーナは“操り人形のように”敵へ足を運ぶ。
ヴァイス
「科学者は優秀ですね。
知識ある者ほど、幻に落ちやすい」
死神レイヴは笑いながら舌打ちする。
「イヒヒ……厄介だねぇ。
でもこの幻術、殺す気満々じゃん。先生、どうする?」
アイゼンは深くため息をついた。
「……じいさんの出番か。
腰が痛いのに、まったく……」
杖を構え、
「ルアーナ、帰ってこい!!」
響く老人の怒声。
幻の世界がひび割れ、ルアーナの表情に揺らぎが走る。
リュカが叫ぶ。
「ルアーナさん!僕たちがここにいるよ!!」
その瞬間、ルアーナの瞳が戻った。
「……先生……リュカ……
ごめん……!」
アイゼン
「謝るな。今は逃げるぞ!」
死神レイヴ
「イヒヒヒ!スリルは満点だぁ!」
ヴァイスは砂の迷宮を操り、
街中が“追跡ステージ”のように化ける。
建物が倒れ、砂が竜巻を巻く。
アイゼン
「昔はこういうの、大好物だったんだがなぁ……腰が……!」
ルアーナ
「先生、走って!死ぬ!!」
レイヴ
「イヒヒヒヒ!!もっと狂えぇぇ!!」
リュカ
「もうやだぁぁぁぁ!!!」
四人は幻術の迷宮からギリギリで脱出。
ヴァイスの声が遠くで響く。
「逃げても無駄だ。
王冠の欠片は、すぐに“闇”へ帰る……」
荒野へ戻った四人。
ルアーナは悔しそうに唇を噛む。
「……私、仲間を危険に晒しちゃった」
アイゼンは肩をすくめる。
「若いってのはそういうもんだ。
間違えたら、戻ればいい。
ワシらは仲間だろうが」
リュカ
「……ルアーナさんがいなきゃ、僕も逃げられなかった……」
レイヴ
「イヒヒヒ……面白かったからいいじゃん?
次はもっと派手なのやろうよぉ」
ルアーナ「黙ってて!」
だが四人の間に、確かに“絆”が強くなっていた。




