第十話 M-1決勝戦、魔界最強の笑い、決着!!
魔界最大のドーム劇場。
満員の観客が、熱気で空気をゆがませていた。
司会魔人が宣言する。
「ついに来ました! M-1決勝戦!!
まずはMMCから、黒電ハーデン × 断罪ルーメン!!」
黒電ハーデン × 断罪ルーメン
黒い雷をまとった男――黒電ハーデンが高速で突っ込みを連発。
相方の断罪ルーメンは光の剣を出しながらボケ倒す。
ルーメン
「俺さぁ…さっき舞台裏で神を断罪してきたわ」
ハーデン
「誰に許可取ってんだ!! そのうちお前が断罪されるわ!!」
観客、爆笑。
魔力の笑いエネルギーが天井で火花を散らす。
さらに、彼らは“人を傷つける笑い”を完全封印。
悪口はゼロ、代わりに 自分たちの失敗と黒歴史だけをネタにする。
ルーメン
「俺ら昔、コンビ名を“光と黒の二重影”にしようとして…
校長に“中二すぎて吐き気する”って禁止されたんだよね」
ハーデン
「やめろ! 俺の黒歴史を勝手に照らすな!!」
会場
「ギャハハハハハ!!」
審査員の点数、次々と入る。
黒電×断罪 → 4ポイント獲得。
ドームが揺れるほどの大喝采。
彼らは深々と礼をして退場。
そして司会が叫ぶ。
「さあ!!
対するは魔界養成カルチャーMNCから
ボルカ × クール=リース!!!」
ボルカ × クール=リース、静かに登場
ボルカ(炎獄族)は炎を小さく灯し、
クール=リース(氷霊族)は冷気を漂わせる。
まるで夏と冬がコンビを組んでいるような佇まい。
観客は期待と不安でシーンと静まり返る。
クール=リース
「……今日もやる気は……0度」
ボルカ
「最低気温で漫才すな!!」
最初のツッコミで会場が一気に明るくなる。
二人は
炎と氷という“相反する属性”を、自虐ネタに昇華させていく。
ボルカ
「俺、緊張するとファイアボール投げちゃうんよ」
クール=リース
「今日も当たったら……溶けるし……」
ボルカ
「お前が溶けたら漫才終わりやろ!!」
観客がドッと笑う。
さらに、さっちゃんの教えである
“人を傷つけない笑い” を徹底。
ボルカ
「誰も燃やさん! 誰も凍らせん!
今日はただ……お前と笑い合いたいだけや!!」
クール=リース
「……そんな暑苦しい友情はいらん……けど……
少しだけ……わるくない……」
観客が「うぉおおおお!」と歓声。
ふたりの距離が少し縮まる。
魔界全土が湧き返るラストスパート
ボルカが吐く炎を、クールが氷で急速冷却。
溶けた水が花のように舞う、美しい演出。
クール=リース
「……ほら、スベり芸って……こうやって物理でやるんよ……」
足元の氷がツルッ!!
ふたりが同時に転ぶ。
ボルカ
「完全に事故やろコレ!!」
会場、最大の爆笑。
審査員の点数が入る。
ボルカ×クール=リース → 4ポイント獲得。
同点。
残るはただひとり――
審査員長、魔界笑王ザ=ハハハの一票のみ。
最後の一票勝者は?
ザ=ハハハ審査員長が立ち上がり、
ゆっくりマイクに口を寄せる。
「両者とも最高だった。
黒電×断罪はテクニックと完成度が群を抜いていた。
だが……」
会場、息を飲む。
「ボルカ × クール=リースには
“誰も傷つけない笑い”と、
互いを信じる心 があった。」
ふたりがハッと顔を上げる。
「ワシの一票は……
ボルカ × クール=リースじゃ!!」
ドォォォォォォォォン!!!
観客総立ち!
魔界史上最大の拍手が巻き起こる。
涙ぐむボルカ。
頬を赤らめるクール=リース。
ボルカ
「お前と……ここまで来られてよかったわ」
クール=リース
「……やっぱ……溶けるくらい……うれしい……」
ステージのライトが二人を包む。
司会
「魔界M-1王者――
ボルカ × クール=リース!!!」
舞台裏でさっちゃんが涙をこらえて叫ぶ。
「お前ら……最高や!!
今日の笑いは……誰も傷つけん優しさでできてた!!
胸張ってええ!!」
生徒全員が駆け寄り、
抱きしめ合い、泣き、笑う。
今日、魔界で一番笑ったのは、
客でも審査員でもなく
仲間を信じたこのコンビだった。




