第１話 鬼教師、青春学園に降臨

春風がそよぐドキドキメモリー学園――

校門をくぐった瞬間、さっちゃん先生の鼻孔がむずむずした。

「……うっ、青春の香りが鼻につく！　何この砂糖まみれの空気！」

小学生にしか見えないが、眼光は魔界350歳の女王様。杖を握りしめ、全校生徒に圧を放つ。

校舎の向こうでは、野球部タケルがバットを振るたびに校舎が揺れる。

「おおっと、ホームランだぁ！」

タケル本人は照れ隠しで顔を真っ赤にしているが、打球のスピードは常軌を逸している。

赤城タケル――野球部の4番エース。

打球が速すぎて空気まで爆発するモテモテ男子。

恋愛経験ゼロ。告白されると手が震える純情派。

さっちゃん先生は即座に突っ込む。

「何やってんの！　校舎壊す気!?　青春エネルギーで地球まで揺らすつもり!?」

その横ではバスケ部ナオヤが恋バナに夢中でジャンプ力増幅中。

「え、えっと…いや、その…」

次に現れたのは氷室ナオヤ――バスケ部のエースガード。

クール系美男子だが、恋バナになると冷静さを失い、パニック。

恋の力でジャンプ力増しすぎて、リングをぶち破ることもしばしば。

思わず空中でボールを見失い、リングを超えて跳び上がる。

「だから何やってんのよ！　バスケは地球を破壊するためのスポーツじゃないの！」

陸上部リョウは風のように走る。恋する乙女・山吹かのんに思いを寄せ、加速した拍子に教室の壁に穴を開けてしまう。

「きゃあああ、ちょ、リョウ!?」

「ごめん、止まれない…！」

陸上部の風間リョウは風のように校庭を駆け抜け、

恋すると加速して音速突破、教室に穴を開ける危険人物。

さっちゃん先生は杖をふりかざし、壁に飛び散るコンクリートを吹き飛ばす。

「もう！　誰も死ぬなっての！　青春の加速力は危険すぎるわ！」

校庭ではサッカー部レオンがボールを蹴ると火花が飛ぶ。

新マネージャー青海は呆然と見守るだけ。

「リョウ、どこまで飛んでいくんだよ！」

そしてサッカー部の火野レオンは、

告白されると顔真っ赤、ボールを燃やす熱血男子。

純情すぎて自分の心もボールも制御不能。

「レオン！　ボールが燃えてるでしょ！　危ない危ない危ない！」

もちろん、恋する乙女たちも負けてはいない。

桃瀬ひまり――野球部マネージャー

タケルに恋する純情乙女。

応援するとタケルの成績が跳ね上がる“バフ要員”。

「タケル、今日もホームラン打ってね♡」

桐谷るか――バスケ部の幼馴染女子

ナオヤに片思い中。

ツンデレ全開で体育館のボールを蹴飛ばす。

「ナオヤ……私の気持ちに気づけ、バカ！」

山吹かのん――陸上部の天真爛漫ガール

リョウに恋しているが速すぎて話しかけられない。

徒競走デートで倒れること多数。

青海はづき――サッカー部新マネ

レオンに一目惚れ。

告白すると炎上ボールが飛ぶので危険。

小さな姿で全力ツッコミを炸裂させるさっちゃん先生に、全校生徒は恐怖と尊敬の入り混じった眼差し。

「地獄のONI先生キターーー!!」

そんな中、裏山にある桜の木が風に揺れる。

伝説では「ここで告白されると幸せになれる」と言われているが、さっちゃんは冷めた目で睨む。

「ふん……恋だの青春だの、くだらんわ。……でも、ちょっと面白いかも……」

小さな口元に微かな笑み。

いや、すぐに眉間にしわを寄せて否定する。

「いや、面倒なだけだ！　私はツッコミに徹するの！」

これが、魔界一の毒舌女王様、小学生見た目のさっちゃん先生が、青春の嵐に巻き込まれる第一歩だった。