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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅2~氷槍の死と生の選択~」

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第2話 収容地で異変発生

北の大陸、氷槍の収容地

凍りつく風が鉄柵を叩き、氷の壁がヒビ割れる。囚人たちは凍えながら鉱石を運ぶ。


地下から轟音。鉄と氷が軋む。


「……心臓の鼓動だ。地下で、何かが動いている」

盲目の看守長、バルゴが低くつぶやく。長身、黒マント。目は見えないが、空気の振動、囚人の息遣い、心の温度まで読める――まさに北の掟を体現する男。


「音だけで、奴の位置がわかる……?」

ルアーナが恐る恐る囁く。


「耳だけじゃない。振動、気配、心の鼓動……すべて読む」

バルゴは氷の床に杖を軽く叩き、空気の微細な反響で地下の鉱脈を“視る”。

「逃げる者は殺す。それが北の掟だ」


地面が震える。

「ゴォォォ……」

地下の氷が割れる音。

リュカは手元の絵本を握りしめる。

「……生きたい……太陽を……見たいんだ……」


突如、巨大な影――北の巨人が地下から姿を現す。

その体は氷と鉱石で覆われ、目は鉱石の光を反射して赤く光る。

「ドゴォォン!」地響きが収容地全体を震わせる。


「……こ、これが……巨人……」

ルアーナの声は震え、囚人たちは凍りつく。


一方、例の黒い影が笑う――死神だ。

骨の指を鳴らし、氷の空気を裂く声。


「おお……崩壊の予感、大好物だなぁ……イヒヒヒヒ」


アイゼンハワードは杖を肩にかけ、雪まみれの足でゆっくりと歩き出す。

老人だが、目は鋭く、背筋に宿る老魔族の力が光る。


「フン、巨人か……久しぶりに体を動かす理由ができたな」


バルゴが氷の床に杖を叩きつける。

「奴の心拍、感情、振動……すべて読める。今だ、巨人の隙を狙え!」

リュカが絵本を握りしめながら叫ぶ。

「先生……僕、何か手伝えるかな?」


死神が突然、耳元で不気味に笑う。


「ほほう……少年よ、よく動くな……あんたも巻き込まれるとはね……イヒヒヒヒ」


地下から巨人が手を振り上げ、鉱石の破片が飛び散る。

バルゴは目を閉じたまま、感覚だけでその動きを読む。

「左腕の振り……重心は右……よし、逃げ場はこの角だ」


リュカが思わずつぶやく。

「……生きたい。外の世界、見たい……」


アイゼンは杖を振り、雪と氷の粉塵を蹴散らしながら笑う。


「さあ……おじいちゃんの力を見せてやるか」


死神は空を舞い、氷槍の収容地を見下ろしながら骨の指を鳴らす。


「ああ……崩壊の宴、楽しみだなぁ……イヒヒヒヒ」


凍てつく北の大陸

老人魔族と少年、盲目の看守、そして地下で目覚めた北の巨人。

絶望と希望、恐怖と笑い、破滅の予感が入り混じる夜が、幕を開けた。


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