第3話 美術室の悪夢
魔界学園・美術室。
さっちゃんがドアを開けた瞬間、視界が“色”で埋まった。
赤、青、金、黒……
壁一面、天井、床、さらにはドアノブにまで筆跡が走り、絵の具の飛沫がまるで戦場。
さっちゃん
「ひぃっ!?何この、ミサイルでも撃ち込まれた後みたいな美術室!!」
中央には、スモックを着た美術天才児
ダーピンチ(美術天才児/11歳)
巨大小学生とは思えぬ集中力で、
さっちゃんの顔そっくりの**巨大粘土オブジェ(高さ3m)**を造形中。
「先生、動かないで。いや、動いてもいい。
笑って、いや笑わないで。
眉は上げても下げても……どちらでも芸術的です。」
「注文多いわッ!!!
ていうか私こんな巨大じゃない!!3mどころか2mもないよ!?」
「これは先生の“存在感”を立体化したのです。」
「存在感どうなってんの私!!」
天井からは謎のカラフル液体がポタポタ落ちる。
床にはスライムのように動く絵の具の塊がウニョ〜ン。
「何これ!?塗料が……動いてるじゃない!!?」
「美は生命。
僕は“命を持つ絵の具”を開発してみました。」
「天才の暴走が始まったーーーッ!!」
絵の具スライムがさっちゃんの足に絡みつく。
「ギャーーッ!!離れて!私は絵画じゃないの!!」
ダーピンチ(メモを取りながら)
「ふむ、先生が暴れる姿……芸術的。
このまま“混沌のマエストロ・さっちゃんシリーズ”に——」
「シリーズ化しないで!!」
巨大オブジェの横では、
さっちゃんの顔が20枚ぐらい描かれた肖像画が並んでいる。
笑ってる、泣いてる、怒ってる、
中には宇宙爆発背景のさっちゃんも。
「えーーー!?私いつ宇宙壊した!?
ていうか目が3つあるのもあるんだけど!?」
「先生の内面世界を表現しました。」
「私の内面どうなってんの!?ホラーなの!?」
その時、巨大オブジェがグラリ。
「うわっ!?倒れる倒れる倒れるーーッ!!」
「だいじょうぶです先生。倒れる様子も……芸術。」
「芸術のために命を危険に晒すタイプね!?あなた!!」
さっちゃんは杖で床を叩き、暴走絵の具を吸い込んで停止。
巨大オブジェも必死に押さえて固定し、
美術室はなんとか静けさを取り戻した。
ダーピンチは、汚れたスモックを脱ぎながらため息。
「先生……僕はただ、美を追求していただけなのに。」
「いや、世界破壊は追求じゃないのよ!!!
どこまで行く気だったの!?美術で世界征服!?アートの暴君!?」
ダーピンチ(にこっと)
「でも……先生が困る顔、とても美しかった。」
「もう!!褒められてるんだか利用されてるんだか分かんない!!」
美術室は爆発級に散らかっていたが、
生徒の目はキラキラ輝いていた。
「先生、次は“動く壁画”を作りたいので、許可を——」
「絶対ダメーーーーッ!!!」
魔界学園のイカれたアート地獄は、まだまだ続く。




