第7話 死に場所はカジノか?!
夜の港町。
ネオンが水面にゆらめき、街の裏路地では“盗賊ギルド”の連中がざわついていた。
その中心にそびえるのは、
黒曜石のように輝く巨大カジノ《ブラックホール・パレス》。
金と闇が渦巻く、この町の心臓部だ。
「おい爺さん、ほんとに行くの?盗賊ギルドの本拠地だよ?」
少年が不安げに囁く。
「フッ、怖がるな。こういう場所ほど“面白いモノ”が転がっているもんさ」
コートを翻し、アイゼンは夜の街へ溶け込む。
その背中はまるで——月下を駆けるダークヒーロー。
シャルロットがニヤリと笑う。
「さあ、ご入場といきましょうか。女怪盗の見せどころよ!」
三人はルパン一味ばりの軽快さで、カジノ裏口のセキュリティを
音もなく突破していく。
(シャルロットが宝石をつまんでセンサーに反射させるのは完全に不二子枠)
◆カジノフロア 運命は回る、踊る、転がる。
眩い照明。派手な音楽。
賭け金の嵐。ギルド構成員たちの怪しい視線。
ディーラーが囁くように言った。
「ようこそ…命を吸い込むブラックホールへ」
アイゼンハワードは椅子に腰掛け、カードを指で弾く。
「命までは賭けないさ。ちょっとした“スリル”だけで十分」
盗賊のような軽薄さ。
でも、その瞳だけは鋭かった。
対面するのは盗賊ギルドの“計算屋”と呼ばれる男。
カードの流れを完全に読む、冷酷な天才。
少年は震えた手で最初のカードをめくる。
『10』
『7』
—悪くない。しかし勝てる保証もない。
「大丈夫。お前ならいける」
アイゼンの静かな声が背中を押す。
少年は深呼吸し…
「ヒット!」
めくられたカードは『4』。
合計21。
ブラックジャック。完璧。
計算屋の顔色が青ざめる。
シャルロット「やるじゃない、坊や!」
少年「ぼ、僕だって…やればできるんだ!」
一方その頃――
死神はカジノ奥のルーレット台をじっと見つめていた。
「ふむ、ここの魂の流れ…気に入らんなあ」
指をひょいと振るだけで、
ルーレットのボールがありえない軌道を描き、
何百枚ものチップを吸い込みながら“7”に落ちる。
ディーラー「な、何だと……っ!?」
死神「ほう、これで破産者が一人減った。
借金地獄よりはマシだろう? イヒヒヒ……」
完全に反則である。
少年の勝利で騒然となったカジノ。
盗賊ギルドの構成員たちが総出で押し寄せる。
「調子に乗りやがって…!!」
アイゼンは椅子を蹴り飛ばし立ち上がる。
「夜戦か。悪くない」
杖から魔力が弾ける。
柱の影を滑るように移動し、
敵の武器を軽やかな動作で弾き飛ばす。
まるで怪盗が警察から逃げる時のような“無駄のないふざけた動き”。
シャルロットはシャンデリアから飛び降りて華麗に回し蹴り。
「女怪盗に手を出すなんて…百年早いわ!」
少年はカードを投げ、
(偶然)敵の目にピタリと刺さった。
「わ、わざとじゃないよッ!」
ギルドのボスが怒鳴る。
「お前ら、生きて帰れると思うなよぉ!!」
その時。ギルドのボスの背後に死神が影から現れる。
「やれやれ……ここはそなたの死に場所はここではないぞ。
そこのカジノの奥、“本物の地獄”はあっちだ。イヒヒヒ」
ギルドの連中が一斉に青ざめた。
カジノを後にした三人と死神。
夜風が心地よく、月だけが静かに見下ろしていた。
シャルロット
「ねえアイゼン、今日のあんた…ちょっと怪盗ルパンっぽかったわよ?」
アイゼン
「そりゃ光栄だ。でもわしはわしさ。……どこにでもいる、ただの爺さんだよ」
少年「…ねえ、次の冒険は?」
死神「次はもっと面白い死地へ連れていってやろう。
イヒヒヒ……」
騒がしい夜はまだ、終わらない。




