第六話 夜露の策略

雨に濡れた夜の街角、霧が街灯をぼんやりと覆う。

カズヤは背筋に冷たい感覚を覚えながら、雑踏の中で静かに足を止めた。

「カズヤさん、よく来たわね」

振り返ると、夜露、整形された顔は麗花に酷似しているが、瞳には計算と冷徹さしか映っていなかった。

その声は甘く、しかし鋭い刃のように胸を突いた。

夜露「姉たちは弱かった。美羽も麗花も、結局は感情に流されるだけ。

でも、私なら違う。私は正しいのよ」

カズヤは唇を固く結び、間合いを測る。

その背後では、アル叔父ことアイゼンハワードが静かに立ち、眼光を鋭くして夜露の微細な動きを観察していた。

アイゼン（低く）「なるほど、蛾は闇を纏い、光を操る。

だが、その瞳は計算の網に絡めた人々の恐怖を映している」

夜露は微笑む。微笑みの奥に隠された恐怖は、誰にも気づかれない絶対の掌握力だった。

彼女は巧みに男たち三原、黒川、蓮、朝比奈、一ノ瀬の情報を操作し、動揺させ、証拠の痕跡を消す準備をしていた。

夜露「あなたたち、私が何をしたか知りたいのね？

でも、真実は私の掌の中にある。誰も、誰も触れられない」

カズヤは冷静に視線を夜露に向けた。

だが心の中では、姉妹間の力関係、男たちへの影響、全てが計算された構図であることを理解していた。

アイゼンハワードはささやくようにカズヤに語った。

アイゼン「整形、偽名、そして裏の計画。彼女は蛾として生きることを選んだ。光を恐れず、影の中で全てを操る」

夜露はその視線を嘲るように一瞬止め、ゆっくりと歩を進めた。

雨の音、街灯の反射、歩く靴音。すべてが夜露の策略の舞台装置のようだった。

夜露「さあ、カズヤさん。あなたが追うのは真実か、それとも幻想かしら？」

その瞬間、カズヤは背後の路地に何か異変を感じた。

夜露は男たちの動揺を利用し、最後の証拠を消し去ろうとしている

そして、彼女自身が“真実の鍵”そのものだった。

霧の中、夜露は微笑みながら消えるように歩を進める。

カズヤは拳を握り、暗闇の中で心に決めた。

カズヤ（蛾は闇に生きる。だが、俺たちはその闇を追う）

アル叔父の冷静な観察と、カズヤの直感が交錯する。

夜露の策略、それは静かに、しかし確実に、事件の最終局面へと導いていた。