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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:蛾と蝶 美人姉妹殺人事件』

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第四話 蝶の墓標

都心の雨は静かに降っていた。


しめったアスファルトに、街灯の光がぼんやりと滲む。

夜更けの取調室で、カズヤは一人、記録ファイルを閉じた。

その指先には、重い沈黙がまとわりついていた。


如月麗花の感電死、美羽の絞殺


そして、姿を見せぬ三女・夜露。

カズヤの脳裏には、あるひとつの形が浮かび上がっていた。

それは、闇の中で羽を広げる“蛾の紋。


最初の聴取は、三原聡だった。

彼は企業戦略部のエリート。だが、その眼差しはどこか虚ろだった。


「俺は……ただ、麗花に投資してただけです。

 彼女は“ブランド”になるって……そう言ったんです」


机の上に置かれた契約書。

その裏には、美羽の署名と、もうひとつ“如月プロジェクト”の印。

そして、管理者名には「K・Y」のイニシャルがあった。


「K・Y……夜露、か。」

カズヤはその文字を見つめ、静かに呟いた。


二人目は、黒川颯。

彼はIT企業の幹部であり、SNS運営の裏を熟知する男。


「夜露? 見たことはない。でも、声は聞いた。

 深夜に電話がかかってきて、指示だけが届く。

 “フォロワーを増やせ”“ハッシュタグを操作しろ”ってな。

 あの姉妹は、炎上さえもシナリオ通りにやってたんだ」


黒川の証言が、事件の闇をさらに深くした。

麗花と美羽の死は、単なる情死や怨恨ではない“演出”されていた可能性。


「僕は……利用されたんです。」

蓮 京介の声は震えていた。

彼はまだ学生で、夜露の写真集の裏方スタッフをしていた。


「夜露さんは、僕にこう言ったんです。

 “蝶が死ぬとき、美しさが完全になる”って……

 怖かった。でも、惹かれてしまったんです」


机に置かれたUSBには、撮影データの残骸。

そこには、麗花が亡くなる前夜に撮られた“謎の黒いドレス姿”が映っていた。

背後の鏡には、もう一人の女の影が、ぼんやりと写り込んでいる。


朝比奈透は苦笑いを浮かべた。

「俺は取材のために近づいたつもりだった。

 けど気づいたら、俺の原稿も、ペンも、心も、全部あの姉妹に支配されてた。

 あの末妹……まるで人の感情の構造を“計算”してるみたいだったよ」


一ノ瀬大地も、煙草をもてあそびながら語った。

「夜露に会った? あるよ。

 ただ……顔は思い出せないんだ。不思議だろ?」


誰もが彼女を知り、

誰もが彼女を“知らない”。


夜露という存在は、形を持たぬ亡霊のようだった。

だが、全員の証言が一つの線に収束する。


・麗花、美羽の活動を裏から指示していたのは夜露

・炎上、話題、恋愛スキャンダルすら“計画的”

・最終的に金とデータは夜露の口座に集約


「アル叔父。」

夜のホテルの窓辺で、カズヤが呟く。

外はまだ雨が降り続いていた。


「夜露は姉たちを殺した……そう考えていいんですよね。」


琥珀色のグラスを傾けながら、アイゼンハワードはゆっくりと答える。


「証拠が導くのは確かに彼女だ。

 だが、夜露が“本当に存在する”という保証はどこにもない。

 この事件、蝶の墓標に刻まれているのは、

 “死んだ者たち”ではなく、“まだ生きている影”だ。」


その夜、カズヤは眠れなかった。

夢の中で、黒い蛾が静かに羽を打つ。

そして囁く


「真実を暴く者は、光を失う。」


登場人物一覧

姉妹

如月きさらぎ 麗花れいか:27歳/モデル・インフルエンサー(感電死)

如月きさらぎ 美羽みう:25歳/モデル・SNSインフルエンサー(絞殺?)

三女:夜露よつゆ:23歳/正体不明・第三の影として伏線


姉妹に関わる男性たち

三原みはら さとし:30歳/会社員(商社勤務)

黒川くろかわ はやて:28歳/IT企業勤務

朝比奈あさひな とおる:26歳/フリーライター

れん 京介きょうすけ:24歳/大学生(経済学部)

一ノいちのせ 大地だいち:29歳/サラリーマン(広告代理店勤務)


警察・マスコミ関係者

佐伯さえき しょう:40歳/警視庁刑事

藤堂とうどう つばさ:35歳/警視庁刑事

高橋たかはし 梨花りか:33歳/テレビ局記者

村田むらた 悠人ゆうと:38歳/週刊誌記者


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