表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:蛾と蝶 美人姉妹殺人事件』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1230/1526

第三話 光の裏の影

港区の夜は、いつもどこか湿っている。

ネオンが濡れたアスファルトに滲み、光の筋が揺れていた。


その夜、カズヤは一通の匿名メールを受け取った。

差出人は不明。件名にはただ一言。


「三女、夜露ヨツユ


添付されたファイルには、如月姉妹のマネジメント契約書のコピー、

そして、見慣れない名義の口座履歴。

そこには、亡き麗花や美羽を通じて動いた莫大な“金の流れ”が記されていた。


「……やはり、裏がいたか。」


カズヤは唇を噛んだ。

麗花も美羽も、表向きは“個人で活動するモデル兼インフルエンサー”。

だが、実際には――すべて夜露が背後で操っていたのだ。


彼女は表に出ることを好まなかった。

代わりにSNS投稿の時刻、撮影場所、男性たちとの写真、

それらを“計算された炎上”として利用していた。

話題と同情がフォロワーを生み、フォロワーが金を生んだ。


そしてその金は、夜露の口座を経由して“誰か”のもとへと消えていった。


「蛾は闇に生き、光を模倣する。」

アイゼンハワードが低く呟いた。

バーのカウンターに座り、琥珀色の酒を指先で揺らす。


「蝶は陽の下で賛美されるが、蛾は違う。

 闇を熟知し、夜の熱に集まる光を狩る。

 ――それが、この“三女”の本性だろう。」


「つまり、夜露は姉たちを利用していた?」

カズヤの問いに、アル叔父は静かに頷いた。


「利用し、同時に支配していた。

 人間の“愛情”とは便利な言葉だな。

 自ら進んで、鎖を首にかけていく。」


その頃、男たちの証言が次々と覆されていた。

三原は「夜露なんて知らない」と語り、

黒川は「撮影現場で一度だけ見た」と曖昧に答えた。

だが、朝比奈の古い取材ノートには、こう走り書きされていた。


「麗花にも、美羽にも、常に“背後にいる声”があった」


蓮は、夜露から送られてきたという暗号めいたLINEを見せた。

「蝶は羽ばたいた。次は蛾の番。」

その日を境に、美羽は殺された。


カズヤは夜露の痕跡を追い、都内の廃ビルへ向かう。

そこはかつて、三姉妹が立ち上げた「個人事務所」の所在地だった。

錆びた表札、暗い階段、焦げた匂い。

壁には、美羽のサインと焦げた蛾の羽が貼りついていた。


「夜露……お前はどこにいる。」

呟くカズヤの背後で、夜風がざわめく。

どこかで女の笑い声が、短くこだました。


アル叔父の言葉が、再びカズヤの耳に残る。


「光の裏に影がある限り、 蛾は必ずそこへ現れる。」


そして、次に狙われる“光”は、

まだこの街のどこかで、無防備に輝いていた。

登場人物一覧

姉妹

如月きさらぎ 麗花れいか:27歳/モデル・インフルエンサー(感電死)

如月きさらぎ 美羽みう:25歳/モデル・SNSインフルエンサー(絞殺?)

三女:夜露よつゆ:23歳/正体不明・第三の影として伏線


姉妹に関わる男性たち

三原みはら さとし:30歳/会社員(商社勤務)

黒川くろかわ はやて:28歳/IT企業勤務

朝比奈あさひな とおる:26歳/フリーライター

れん 京介きょうすけ:24歳/大学生(経済学部)

一ノいちのせ 大地だいち:29歳/サラリーマン(広告代理店勤務)


警察・マスコミ関係者

佐伯さえき しょう:40歳/警視庁刑事

藤堂とうどう つばさ:35歳/警視庁刑事

高橋たかはし 梨花りか:33歳/テレビ局記者

村田むらた 悠人ゆうと:38歳/週刊誌記者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ