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【ランキング12位達成】 累計62万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:逃亡者 ―モンゴル爆炎篇Desert of Truth 』

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第1話  黒いラクダの影

挿絵(By みてみん)

夜の砂漠を、乾いた風が吹き抜ける。


ウランバートルから遠く離れた真っ暗な荒野。

星々の下を、二つの影が進んでいた。


「……アル叔父、どこまで歩くんですか?」

カズヤは息を切らせながら問う。

喉の奥に砂が張りつき、息をするたび痛む。


「風が止むまでは、北西に向かう。」

アイゼン・ハワードは叫んだ。


カズヤが“アル叔父”と呼ぶその男は、

年齢不詳の静けさを纏っていた。

深い皺の奥の瞳は、どこか人間離れした光を宿している。

「警察のドローン、まだ追ってきますよ」


「知っている。……奴らは君たち人より、この砂漠の風を信じていない。」


カズヤは苦笑した。

「叔父さんのたとえ話は、いつも難しいですよ」


「そう感じるのは、君がまだ“逃げる理由”を知らないからだ」

ふいに、砂丘の向こうで光が弾けた。


遠くの空で、赤い探照灯が回転している。

警察の特殊部隊が、彼らの痕跡を追っていた。


カズヤは思わず低く呟く。

「なんで俺たちが、爆破犯扱いなんか……」


アイゼンハワードは歩みを止めず、静かに言った。

「誤解というものは、いつも“都合のいい物語”から生まれる。

 あの爆発の背後には、もう一つの物語があるのだよ」


「もう一つ……?」


「天然ガスの取引に隠された“触媒輸送”だ。それが兵器転用可能な物質なら爆発は“事故”ではなく“処分”だ。」


カズヤは目を見開いた。

「じゃあ……誰が、そんなことを?」


アル叔父は砂を一握り掬い、風に放った。

「人間の欲という名の砂だよ。企業も国家も、握りしめすぎれば必ず零れる。」


そのとき、風の向こうから鈴の音がした。

ラクダの一団が月明かりの中をゆっくり進んでくる。


黒い衣を纏った遊牧民たち。

その先頭の老人が、二人に低い声で言った。


「お前たち、“追われる者”だな」


アイゼンハワードはモンゴル語で短く答えた。

老人は静かに頷き、二人を荷車の影へと導く。


遠くで砂嵐がうねり、

ドローンのエンジン音が砂を裂くように響いた。


「アル叔父……、これからどうするんです?」


「黒いラクダを追う。」


「は?」


「彼らが“真実の道”を知っている。」


カズヤは乾いた喉で笑い、

「また叔父さんの直感ですか」と言いながらも、

ラクダの隊列の後ろに歩み出した。


夜明けが近づく。

砂丘の稜線が朝日に染まり始める中、

カズヤは思った。


「俺たちは逃げてるんじゃない。

世界のどこかで仕組まれた“嘘”を、暴きに行くんだ。」


そして、風に舞う輸送リストの一枚。

そこに記された名

「三原聡(日本企業技術顧問)」

それが、次なる“黒幕”の影を示していた。



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