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 グレースの首都は祖国とはまた違った赴きがあって、面白そうだ。


 時間があれば、王都をゆっくりと見て回りたいところだが、先ずはこの国の王に会わねば。


 グロリアが招待したのだから、てっきり彼女の屋敷に招待されるのだろうと思っていたが、我々に与えられたのは、グレースの城の離宮だった。


 私は他国の王族であれど、お忍びで来ているので、待遇をよくしてもらう必要もないのだが、よくしてくれるというのならありがたく頂戴するが。


「荷物の整理が終わりました」

「そうか。では、挨拶に行こうか」


 ミーヌに返事をして行こうかと提案すれば、ゼランがささっと支度を整えてくれた。誰か女性も連れて来るべきだったかもしれないが、陛下に知られたくなくて少人数で来たため、それは叶わなかったが。


 それにしても、グレースの王は何を考えているのか。


 わざわざ離宮とは言え、王宮に滞在させてもらっているのなら機嫌を損ねるのもよろしくないだろうとグレースの王に会いに来たが、グレースの王は貫禄があるな。


 我が国の陛下は貫禄というより、時々どうしても従兄弟殿のようなだだっ子のように見える時がある。


 あの親子は似た者親子なのだろう。ああはなりたくないなと言う思いと、先代の陛下は何を思ってあの方を後継者に選んだのか。


 私の父がまだ生きていればとは思うが、それは空論でしかない。


 グレースの王と少し話をしてあてがわれた離宮に戻ろうかと腰を浮かせ掛けた時に侍従の一人が入って来てグレースの王に何事か耳打ちした。


「そうか。では、行こうか」


 グレースの王に促されて移動した先には見知らぬ顔が十人程。全員の顔が私に敵意を示しているように見えるのは気のせいか。


 いや、近年の関係悪化を考えれば睨まれてるのも仕方ないのかもしれないが、生憎私はその理由を知らないので、この者たちが何を考えているか理解出来ない。


 だが、私は公式に来た訳ではないのだからこの人数は少々多すぎではないかと眉をひそめそうになる。


 それとも、私が知らないだけで他にも何かあるのでは? と内心首を傾げざるおえない。


 彼らの視線を無視して、グレースの王に勧められた席に腰掛ける。


「では、今日の集まりを理解してない方もおられる。今日は説明からしようと思う。よろしいか?」


 理解していないというのは、おそらく私のことだろう。説明してくれるのならば、この場の面々の鋭い眼差しについても何か分かるのかもしれない。グレースの王に頷いて話を促す。


「では、早速話そうか」



◇◇◇◇◇◇




「──待ってください! どういうことなんですか?!」


 グレースの王が語った話は意外過ぎて理解出来そうになく、またそんなことを言われるだなんて思ってもみなかったため、頭を鈍器で殴られたような気分だ。


 というか、今までそんな話は聞いたことがない。


 私の国が人さらいをしていただなんて到底信じられる訳がないじゃないかと言いたいのに、彼らの視線が私に対して厳しいものの理由は話を聞いた後なら納得が出来る。


 出来るか、理解したくはない。それは、私だけではなく、一緒に来ていたゼランとミーヌも同様だった。


 彼らもまた私と同じように目を見開き、信じられないとお互いの顔を見合せていた。


「君が理解しようとしなくとも、我々にとってはそれが真実。もしも、まだ疑うようならば自分たちの手で調べてはいかがか?」

「陛下、そんな甘いことを言ってもこいつらが変わる訳ありません。この者の首を取って奴等に送りつけてやった方がよっぽどマシではないですか?」

「そうだ。こいつらに情けを掛けたところで、連れ去られた者たちが戻って来る訳でもないのですし!」

「気持ちは分かりますが、そんなことをしても関係が悪化するだけでよくなることはありませんでしょう」

「ならば何かいい案があると?」

「それは……」


 私の進退が勝手に決められて行く。だが、それを止められる言葉を今の私には持たない。


 グレースの王が言ったことが衝撃的過ぎて、まだ自分の頭の中で整理が出来ていないというのもある。


 だか、納得している自分もいるのは確かだ。彼らがいうことが真実なのだとしたら、おじ上が他国のことを調べさせるのを禁止させているのも、姫ではなく、あの暗愚の従兄弟殿のことを王位継承者にするのも納得出来る。


 私ならば、姫に継承権がなくとも、彼女の祝福のことを考えれば、特例を作るのも悪くはなかっただろうに。従兄弟殿みたいな愚かな方が操りやすいと考えたのだろう。


 だが、このことに姫が関与していないというのはあり得ない。


 彼女がいなければ、このような危ないことなんてなし得ないのだから。


 私はずっと彼らにいいように扱われていたということになるのか。


 騒がしく議論を交わすグレースの人たちを一通り見比べてからどうするべきか。


 グレースの王は自分で調べるならご自由にと、おっしやってくれたので、ありがたく調べさせてもらうとして、問題はおじ上だな。


 このことを理由に彼を玉座から引き離すことが出来るかと言われたら難しいだろうな。


 まだ騒がしいグレースの人々に軽く挨拶を済ませ、ゼランとミーヌに彼らの話が本当かどうか調べてくるように伝えて行かせた。


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