連れてこられた牢獄で出た食べ物を食べたら睡眠薬を盛られていました
出てきた男たちは100人くらいもいた。でも、そんなのぴーちゃんの一撃で倒せる。
しかし、何故わざわざ出て来たんだろう? ぴーちゃんが古代竜だと知らないんだろうか?
そこまで馬鹿だとは思えなかった。
でも、その理由はすぐに判った。
「ヴァージル様!」
後手に縛られたエイダが連れ出されてきたのだ。
今まで怖かったのだろうか? ジルを見て喜んだ声を出していた。
「こいつが殺されたくなければ大人しく言うことを聞け」
男の一人が後ろから抜き身のナイフをエイダに突きつけていた。
まあ、エイダには今まで散々色々虐められてきたけれど、それでも殺されて良いとは思わなかった。
「エイダ。何故ここに?」
ジルがきいていた。
「心配であなたを付けてきたんです」
エイダは言うんだけど。馬車か何かで追ってきたのだろうか?
はっきり言って無謀以外の何物でもなかった。良くここまで無事に来れたものだ。
「じっと屋敷で待っていろと言っただろうが」
ジルが言うが、
「だって、ヴァージル様がその女に盗られそうで怖くて」
エイダは私の方を向いて叫ぶんだけど……
とんだ濡れ衣だ。
私はジルのことなんてなんとも思っていない。
それはイケメンだし、昔死にそうなところを治してあげたことはあるけれど、それだけだ。
確かに、マチルダの屋敷で迫られて赤くなったことはあったけれど、それで恋に落ちるほど、私は安くはないはずだ……
「何を言っているんだ。エイダ。そもそも、君は、私を昔看病してくれただけの関係で、それ以外の何でも無いだろう」
「えっ、そんな、酷い」
エイダはジルの宣言に泣き出したんだけど。
「ジル、今、それを言う必要あるの」
「いや、それはそうだが、俺はパティに勘違いされたくない」
マチルダの注意にジルが言うんだけど、私が何を勘違いするんだろう?
「まあ、お前の婚約者はマチルダだしな」
ブラッドが言ってくれるが。
「それは形だけで」
ジルが即座に言い返すけれど、
「お前らいい加減にしろ! この女がどうなってもいいのか!」
勝手に話しだした私達を見て男が切れていた。
「ヒィィィィ」
エイダが悲鳴を上げる。エイダの頬が切れて血が一筋流れていた。
「な、なんてことを」
女の顔に傷つけるなんて私は許さない。
私がプッツン切れて変身しようとしたときだ。
「パティ、待って。奴らの後ろに誰がいるか見極めてからよ」
マチルダが私を止めてくれたのだ。
ここでやっつけたかったのに!
「で、私達に何を要求するわけ」
マチルダが男を見て聞いてくれた。
「ふん、そこのマチルダと侍女の女。そのまま前に出ろ」
えっ、私達二人なんだ。
「何をするつもりだ」
ジルが叫ぶが
「余計なことは話すな。この女が死んでもいいのか」
男はヒステリーを出して叫んでいた。
「ジル、私達は問題ないから」
マチルダが言うが、
「お前は大丈夫かもしれないが、パティが」
「な、何ですって」
ジルの言葉に今度はマチルダが切れているんだけど。
「お前らな。いいかげんにしろよ」
「キャーーーー」
ナイフを顔に突きつけられて、前に引きずり出されたエイダが叫んだ。
これ以上興奮させてエイダがこれ以上傷物になるのは良くない。
マチルダと私はゆっくりと男の前に行った。
「そこの女。これから転移して、お前をとある高貴な人の前に連れて行く。その竜にも静かにしているように伝えろ」
「ちょっと、待て、お前ら」
「ブラッド!」
ブラッドが叫んで前に出ようとするのをジルが止めていた。
「パティ、こいつの言う通りにして」
マチルダが言うんだけど、何か碌でも無いやつの前に連れて行かれるような気がするんだけど。
私はぴーちゃんにきつく抱きついた。
「我は世界一の魔術師ザカリー・ラブクロイである。愛の女神よ! 我を彼の方のもとに連れて行くのだ」
どんだけ長い詠唱だよ。私と変わんないじゃない。
私が馬鹿にしたときだ。
私達は光に包まれた。
「パティ!」
ブラッドか、ジルの声が聞こえたと思った瞬間、目の前が真っ白になって次の瞬間、広いお屋敷のような所に転移したのだ。
そして、そのまま、私達は地下の牢屋に連れて行かれたのだ。
「大人しくしているのだぞ。少しでも余計なことをすればこの女の命はないからな」
魔術師はそう言うと出ていったのだ。
「何かあっさりしているわね」
マチルダが驚いて言った。
「まあ、こんな牢屋いざとなればなんとでもなると思うけれど」
私が言うと、
「誰が出てくるかよね。じっくり待ちましょう」
マチルダが言ってくれた。
そこへ扉を開けて侍女たちが美味しそうな匂いを立てた料理を持ってきてくれたんだけど、何でこんなに待遇が良いの。
ちょうどお腹が空いていたのよね。
ぴーちゃんも目をランランと輝かせている。
「ちょっと、パティ、勝手に食べたら……」
そして、マチルダが何か言ったときには私もぴーちゃんも口の中に料理を入れていたのだ。
そして、次の瞬間私の目の前は真っ白になってしまったのだった。
食い物につられやすい一人と一匹でした。
続きは明朝です。





