寮の歓迎会で何故か昔の雇い主の侯爵令嬢に遭遇しました
私はブラッドに学園の寮まで送ってもらった。
「我が家から通えばいいじゃないか」
最後までしつこくそう言うブラッドをなだめすかして、私は女子寮に入ったのだ。
王立学園は王都にあるので王都にタウンハウスのある子弟はタウンハウスから通っていた。当然、ブラッドの侯爵家もタウンハウスは王都にあった。
でも、なんで学園にいる時からブラッドの護衛をしなければいけないのだ!
まあ、学園に入れたのはブラッドのおかげだが、元々、私が独立派からブラッドを助けてあげたのだ。その御礼となれば安いものだ。そう思っているので、私は全然ブラッドの意向に逆らっても平気だった。
親たちが聞けば何故ブラッドのタウンハウスから通って既成事実を作らなかったのよ! と問い詰められそうだが……
まあ、我が男爵家も、その私の恩恵を受けているのだから良いだろう。
そして、タウンハウスの無い学生には寮があったのだ。男爵とか子爵の多くはタウンハウスなんて王都になかったし、王都在住以外の平民の多くも寮生活だろう。
ぴーちゃんに興味津々で、抱こうとして無視されていたジルは王都にタウンハウスがあるとのことで、エイダも下宿先が見つかるまではそこに住むとのことだった。エイダは下宿するらしい。
私はできる限りジルともエイダとも離れたいので、それが有り難かった。
私はせっかく学園に入るのだから、せめて友達が欲しかった。この世界に女友達と言える存在はまだないのだ。エイダとか虐めてくれる嫌な知り合いは多かったが……
お貴族様は私がローズお嬢様の婚約者を奪ったと勘違いしているから相手にしてくれないと思うが、でも、同じくらいの低位貴族とか裕福な平民の子なら友達になってくれるかもしれない。
私は期待したのだ。
受付で名前を言うと、幸いな事に学園ではまだ知られていないみたいで、何も言われなかった。
部屋は女子寮の2階だった。
中に入ると既に同室の子がいた。
「私、ヘーゼル・ドボルよ」
「私はパティ・ロウギルよ」
私達はお互いに自己紹介した。
ヘーゼルは青髪でグレーの瞳のどちらかと言うと獅子っ鼻の男爵家の令嬢だった。
家は家の王都を挟んで反対側だが、彼女の所も山の中だそうだ。
良かった、同じような境遇の子で。
私は嬉しくなった。
「その子はなあに」
そうだった。私はペット用のかごにぴーちゃんを入れていたのだ。
「この子はぴーちゃんなの」
私はそう言うと籠からぴーちゃんを取り出した。
「まあ、可愛い」
ヘーゼルは言ってくれたりのだ。
「抱いても良い?」
「当然よ」
私はぴーちゃんを差し出した。
「ぴー」
ぴーちゃんも愛想よく手を差し出して甘えてくれた。
「まあ、可愛い」
「そうでしょ。ぴーちゃんをトカゲって言って毛嫌いする子もいるんだけど、ぴーちゃんは本当に可愛いのよ」
私は横からぴーちゃんをなぜた。
「本当に可愛いわね。この子、お菓子とか食べる?」
「何でも食べるわ」
虫も食べるけど、それは内緒にしておこうと私は決めたのだ。
ヘーゼルは早速ぴーちゃんにお菓子を上げてくれていた。
そして、その夜は寮の先輩による寮生の歓迎パーティーがあったのだ。
私は、余りそう言うところには出て行きたくなかったが、
「お願い。私ほとんど知り合いがい無くて、ぜひともパティと一緒に行きたいの」
そう言われれば行かざるを得ないではないか。
私は参加者は寮生だけだと思っていたから、そこにまさかあの子が来るとは思っていなかったのだ。
寮の歓迎パーティーなんてくつろいだ簡単な私服でいいと思ったのだが、
「そんな訳ないでしょ」
ヘーゼルに言われてしまった。
明日からは制服があるのにと思いながら、仕方なしに、ブラッドから贈られた今日着ていたピンクのドレスを着る。
学園って本当に面倒くさい。ぶつぶつ言いながらヘーゼルと一緒にレセプションルームに行くと、ヘイゼルの言う通り、ちゃんと着飾った皆がいた。
ほらね。と目でヘーゼルが言ってきた。
でも、そんな時だ。
「あああら、これはパトリシアではなくて。あなたよくも平気な顔して私の前に出て来れたわね」
そこには怒った顔のローズお嬢様が立っていたのだ。
どうなるパティ?
続きは明朝です。
そして、ついに悪役令嬢登場です!
こうご期待?





