気付いたらお嬢様の婚約者と抱き合っていて、お嬢様の顰蹙を買ってしまいました
せっかく、私は魔法少女沙希様として、格好良く決めたのに、3分間のルールを忘れていたなんて、本当に馬鹿だ。
意識を失う前に、私はお嬢様とブラッドリーを抱き寄せて、何とか水の上の場所を見つけてそこに置いて気を失ったのだ……
私は夢を見ていた。
「やっと見つけたよ。ピンクの君を」
男が私のピンクの衣装を見つめて、呟いているのだ。
その男はどこかで見たことがあった。
そうだ。昔助けた、高位貴族の男の子に似ている。
でも、その手は私の衣装にのびておりギュッと抱きついてきたんだけど、
「何触っているのよ」
パシン!
思いっきりその頬を張ったら、何故か現実に手が痛かった。
ハッとして目が覚めるとそこには驚いた顔をしたブラッドリーと、後ろで怒リ狂っているお嬢様がいたのだ。
「ちょっと、パトリシア、あなた、ブラッドリー様に流し目するだけに留まらないで、誘惑するってどういう事?」
「はいっ? 何を仰っているんですか。寝ていたら、抱きつかれたからほっぺたを引っ叩いただけです」
私は自己主張した。
昔のままなら、有耶無耶にして更にひどいことになっていたのが、自己主張できるように成長したのだ。
私は余計なことに感動していた。
「何言っているのよ。あんたがブラッドリー様に抱きついていたんじゃない」
「そんな訳は……」
たしか、二人をこの階段の上まで連れてくるたけで、力尽きて、そのまま、抱いていたんだ……
えっ?
私は青くなった。
そんな、私は二人が溺れてはいけないとわざわざ力のなくなる前に抱き寄せて水のないところに連れて行ってあげたのに!
その行為がこんな問題引き起こすなら、そのままにして水の中に墜落させればよかった。
私は後悔したのだ。
水は私の力がなくなると同時に、結界がなくなり、建物の隙間から外に流れ出したらしい。
じゃあ、ほっておいたら二人とも溺死することは無かったのか……
でも、待って、それなら、二人を抱いていたはずだ。
お嬢様は階段の下にいるんだけど、寝相が悪くて落ちたのか?
「そこの騎士のあなた。あなたも見ましたわよね」
お嬢様が何故かたくさんいる騎士の一人に聞いたのだ。
ならず者達はひとところに集められていた。みんな青くして私を見ている。
その周りに騎士がたくさん動いていた。
「えっ、ブラッドリーの坊っちゃんがそっちの女に抱きついたところで引っ叩かれたのは見ましたよ」
「ほら、私は何もしていないでしょ」
私は必死に言い張ったのだ。
「何言っているのよ。あんたがブラッドリー様を誘惑したのに違いないわよ」
「いや、そんな事無いです。ねえ、ブラッドリー様」
「……」
何故かブラッドリーのヘタレは私を見て赤くなって返事をしないんだけど……何でだ?
「ちょっと、やっぱりそうなのね」
「違います!」
お嬢様に私が言うが、ブラッドリーは赤くなって、何も言わないのだ。それも私を見る視線が熱いんだけど……
これって本当にやばいんじゃ……
結局お嬢様の怒りは溶けなかったのだ。何故か急に私に熱い視線を向けるようになったブラッドリーとそれを見ていきり立つお嬢様との間で、私は泣きそうになったんだけど。
余計な事をしなければ良かった。
私が魔法少女だという事実を言うわけにはいかないし……
結局、賊達は復活したブラッドリーが、賊たちを退治したということで話をまとめさせた。
「いや、でも賊は君が」
話そうとするブラッドリーの口を押えたら更にお嬢様がギャアギャア言い出したんだけど、ここは仕方がないじゃない。
「あなたがしたことにして!」
私が目に力を籠めて見つめると
「まあ、君が良いと言うなら」
しぶしぶブラッドリーは認めた。
「あんたたちもそれでいいわよね」
ならず者たちに私はがんを飛ばして黙らせたのだ。
事実を話したら海に沈めると! 頭の中に命令したのだ。
溺れさせられそうになった男たちはそれがトラウマみたいで、私の一睨みで黙ってしまった。
「結局君には助けられたな」
別れしなにブラッドリーが私に声をかけてきた。
「君だろう。破落戸を水に沈めて恐怖を植え付けたのは」
何こいつ、気付いていたのか?
「さあ、何のことでしょう?」
でも、ここは白を切るしか無い。私は無視することにしたのだ。
「まあ、良いよ。今回の借りは必ず返すから」
そう、言って微笑んでくれたんだけど、ガキの微笑みに興味はない。
笑う暇があったらもっと鍛えろよと私は言いたかった。
ブラッドリーーからの熱い視線に全く気づいていないパティ。
そして、お嬢様の怒りを買ってしまったパティの運命や如何に?
今夜更新予定です。





