閉じ込められた昔の食料庫で悪巧みを聞いてしまいました
「で、でた!」
私が大声で叫ぼうとした時だ。
「ぴーーーー」
そのお化けが鳴いたのだ!
えっ、お化けがぴーって鳴く?
よく見るとなんとそれはぴーちゃんだったのだ。
ぴーちゃんは天井からどたりと落ちてきたんだけど。
私はほっとした。
「もう、ぴーちゃん驚かせないでよ。お化けと勘違いしたじゃない」
「ぴー!」
お化けと間違われたぴーちゃんが抗議してきたけれど、急に出てくるぴーちゃんが悪い!
でも、ぴーちゃんで良かった。
わたしはぎゅっとぴーちゃんを抱きしめたのだ。
これでもう怖くなくなった。
ぴーちゃんさえいてくれたら問題はないのだ。
ぴーちゃんがガサゴソ動き出した。
「ちょっとぴーちゃん私から離れないでよ」
慌てて私が言うが、
「ぴー」
ぴーちゃんは食料庫の棚を開けて中を漁ってくれたのだ。
そして、袋を破ると何か舐めだしたんだけど、ちょっと待ってよ!
使われていない食料庫にあるものなんて碌なものは無いはずだ。
私は慌てた。まあ、余程のことがないとぴーちゃんはお腹を壊さないと思うけど、少しは心配だ。
私並みに食い意地は張っているし、そう言えば私もぴーちゃんもお腹を壊したことはないけれど、何でだろう?
余計な事を考えていたが、ちょっと周りが暗すぎる。何をぴーちゃんが舐めているか判らない。
「ライトがほしい」
私が明るくなることを想像した時だ。
ピカリと魔法ランプが光ったのだ。
「えっ、何で?」
魔法は無心で唱えろと教科書には載っていたのに、今、明るくしたいと思った途端詠唱しなくてもランプが光ったんだけど、ヒョツトして、教科書が間違っているのか?
私が心のなかで思っただけで、明るくなったぞ。
「暗く」
心のなかで想像するとライトが暗くなって
「明るく」
心のなかで思うと明るくなってしまった。
ひょっとして心のなかで想像すれば全て魔法は使えるのか?
私は魔法のコツを掴んだ気がしたのだ。
そう言えば3分間無敵のときも思い浮かべただけだった。
「なんだ。ひょっとして魔法少女にならなくても魔法は使えるんだ」
私は嬉しくなった。
ライトを付けて消してを次々にやったのだ。
ガチャッ
そんな時だ。外から音がした。
ガチャガチャとドアノブを開ける音がする。
「えっ?」
私は何故か慌ててライトを消した。
「あれ、ライトが付けっぱななしだったように思ったんだけど」
扉を開けて、ライトを点けつつ、執事の一人が入ってきたのだ。確かデービーさんだったっけか。
何故か私はぴーちゃんと物陰に隠れていた。
こんな所に執事さんが来るなんて変だと第六感がやばいと告げていたのだ。
「ぴー」
「しー」
ぴーちゃんが鳴こうとするのを私は止めた。
「よう、デービー、どうだ。お嬢様方の様子は」
そこには庭師の一人が入ってきたのだ。名前までは覚えていなかったが、面相の悪い庭師だ。
「お嬢様がパーマン侯爵家の坊っちゃんとお忍びで来週出るそうだ」
「そうか。それはまた、危ういな」
心配の欠片も感じない声で男が言った。
「護衛の数も少ないらしい」
「それは拐かすにはちょうどいいな」
下ひた笑みを浮かべて男が言った。
「身代金目当てでもいいし、何なら女は帝国の外に売れば良い」
「まあ、わがままお嬢様には世間の風波のキツさを味わってもらうには丁度いいだろう」
「操がどうなるかは知らないけれどな」
二人は笑いあったのだ。
なんて事だ。こいつら高位貴族の子供を攫って身代金を狙うみたいだ。普通の賊がそんな事をするのか? 確かに金になるかもしれないが、この家にもパーマン家にも騎士団はある。めちゃくちゃリスクが高いように思うんだけど。
「まあ、裏切り者のアーブロースとパーマン家にはいい薬だろう」
「まあ、良い金になるしな」
何か裏もありそうだ。
ひとしきり笑うと二人は具体的な事を話しだした。
何かゲスな話だ。たしかにお嬢様は性悪で、私をこんな所に閉じ込めてくれた元凶だが、13歳で娼館に売られるのは酷いだろう。それにコイツラがお嬢様を綺麗なまま売り飛ばすとは思えなかった。
むっとすると何故かランプが点いたり消えたりするんだけど。
「何だ?」
男たちは二人顔を見合わせた時だ。
ランプが完全に消えた。
そして、ぴーちゃんがとことこ歩き出したのだ。
ちょっと、まずいって!
私が慌てた時だ。
一瞬ライトが付いて、男二人がぴーちゃんを見つけたのだ。やばい!
「ぎゃーーー」
「出たーーーーー」
二人はぴーちゃんを見て悲鳴を上げて部屋を飛び出して行ったのだった。
暗闇の中で見たぴーちゃんは何に見えたんでしょう?
続きは明朝です





