神々のゲーム ヒロインに悪役令嬢の知り合いを送り込みました。
私、黒服はこの天界で何百年と行きている神々の一人だ。
ただの黒服ではなくて、誰が何と言おうと神なのだ。
ただ、当然下っ端だ。
下っ端はどこの世界でも雑用と決まっている。
近年地球の人口増は激しく、大量の死者に天国も地獄も対応できなくなってしまった。
そんな中で神々が協議して作り出したのが、異世界だ。
別名ゲームの世界とも言う。
そして、現世で、どこから漏れたのか、この世界の情報を調べて作り出したのが、乙女ゲームだった。
私はこのゲームの世界の一つ『リーズの聖女』を必死に管理している管理人だ。
こんな管理人は何百といる。その中の一人だ。
神であって神でない。単なる管理人なのだ。
私の作ったこの異世界は主人公のパティが散々いじめられるゲームなのだ。
そして、中々クリアできないことで有名なのだ。
でも、あまりに難しすぎたので、上役の神様方が切れてその世界で暴れてくれるのだ。
そうなると、その瞬間に世界が終わって、また一から世界を構築しないといけない。
本当に大変なのだ。
何しろゲームがクリアできなくて主人公が死ぬたびに世界が滅ぶのだから。
戦神と悪魔がこの異世界で戦い出すとか本当に大変なのだ。
本当にやめてほしい。
何故か戦神も悪魔もパティをいたく気にいっているのだ。
他の異世界では主人公が亡くなろうが、ヒーローが死のうがそのまま世界が続くのに、本当になんとかしてほしい。
そもそも、万物の創成期からこの時代まで世界を作り上げるのが本当に大変なのだ。
下手したらこの星に向かって飛んでくる巨大隕石で惑星は粉々になって滅びてしまうし、火山の大噴火が起こると人類すべてが滅んでしまう。大地震で大陸が沈めばその文明も滅んでしまうのだ。
一つ処理を間違うとまた一からやり直しだ。本当に人類がここまで進化できたのは神々が長年たゆまぬ努力をしてこられた賜物なのだ。
そのことは自分で異世界を作ってみて初めて判った。
その類稀なる苦労をして、やっとゲームが始まるのに、このヒロインは全然生き残れないのだ。
難易度を上げすぎたのだろうか?
何しろこのゲーム、ヒロインは危機の連続なのだ。
まず5歳の時だ。王位継承権を優位にするためにドラゴンの卵を盗んで大怪我した王子様が卵と一緒に転移してくるのだが、一番最初の異世界転生ヒロインはあまりの大怪我に驚いてヒールかける間もなく気絶してしまったのだ。
おいおい、そんなことがあり得るのか?
聖女が王子様の怪我見て気絶するなんて!
当然王子も助からずに、還った卵の子供が親を探す鳴き声にドラゴンが転移してきて、怒り狂ったドラゴンにヒロインも殺されてしまったのだ。
せっかくゲームが始まると喜んでみていた戦神があまりの事に怒りのあまり転移、ドラゴンと戦い始めて、悪魔がいたずらして戦神の怒りの雷がマントル直撃して大噴火して惑星が真っ二つに割れてしまったのだ。
私の努力は一瞬で破壊されつくしてしまった。
これは一からやり直すしかない。
これに味をしめたのか、ヒロインが死ぬたびに戦神と悪魔がいたずらするようになったのだ。
本当にやめてほしかった。
一度目のヒロインは確かに弱すぎたのだ。
次のオーディションでヒロインの座を勝ち取ったヒロインはそこは大丈夫だった。
王子をヒールで治して、そのまま、おばあちゃんの家で療養させていたら、金持ちがいると勘違いした盗賊団が襲ってヒロインを殺してしまったのだ。
それを見ていた戦神が怒って雷撃を盗賊共に浴びせたら、大きすぎてまた大噴火が始まって地上は絶滅してしまった。
それを三四回繰り返して、やっと王子を村長の家に引き渡してくれだしたら、今度は村長の娘が嫉妬して、ヒロインを追い出したのだ。
何もわからないヒロインは追い出されたら追い剥ぎに合うわ、人身売買組織に売られるわ、もう最悪、全然ゲームが進まないのだ。
その度に戦神が体現してこの星を壊すのは止めて欲しかった。
やはりもっと強い主人公がいるのだ。
そんな時だ。
閻魔様と堂々とやり合う強者がいたのだ。
その女、町田万智は天界を恐怖のどん底に追いやって、この人物こそはと思ったのだが、この女はなんと「ヒロインなんてつまらないわ。私は悪役令嬢をやってあげる」
と嬉々として異世界転生していったのだ。
ちょっと待て!
それでなくても、ヒロインは弱いのに、対抗馬の悪役令嬢に史上最強の人間が行ったら絶対に終わらないではないか!
私は絶望した。
そんな時だ。万智の知り合いの藤崎沙季がやってきたのは。
もう最後の神頼みとばかりに、俺はその子をヒロインにしたのだ。
子供のヒロインが臨んだのが魔法少女というのも驚いたが、3分間無敵にすればなんとかなるだろう。これならばあの無敵の悪役令嬢にも勝てるかもしれない。
俺はやっと希望を持ってヒロインを送り出したのだった。
ゲームの裏事情が明らかに……
続きは明朝です。





