第62話 三島さん、ご乱心
俺は『X』を演じる為、月読を参考に爽やかイケメン系の感じの良さを出しつつ話す。
「こっちこそごめん。突然、雨が降ったからここで雨宿りしてるんだよね? じゃあ、今シャワーを浴びてるのが杉浦か」
さも、今杉浦はシャワーを浴びている最中ですよというカモフラージュをする。
そして、同時に三島の状況も理解してますよというフォローを入れた。
三島は必死にコクコクと頷いている。
赤べこかお前は。
「あ、ああ、あのっ! ど、どうしてこんなところに!? え、『X』さんが!?」
三島は相変わらずのどもりっぷりだ。
つーか、お前探星高校の中庭で『X』になんて絶対負けない(キリッ)みたいなこと言ってなかったか?
本人を前にしたら狼狽えすぎだろ。
「僕は杉浦の友達なんだ。勝手に家に居ても怒られないくらいには仲が良いよ」
とりあえず、無難な嘘で乗り切る。
これならまぁ、俺の家に居た理由にもなるだろう。
「そ、そうなんですね! 杉浦さんのお友達! あ、あははっ!」
なにわろてんねん。
アイドルの試験ですら愛想笑いをしなかった三島が『X』に全力で愛想を振りまいていた。
笑顔を見せて好かれようとかじゃなくて、突然の出会いにどうして良いか分からなくて笑っている感じだ。
なんて言うかもう、いっぱいいっぱいなご様子。
正直、少し可哀そうになってきた。
喜ばせようと思って会ったけど、逆に三島に負担をかけてしまっている。
そんな時、リビングに窓から太陽の陽が差し込んできたので俺は外を見上げた。
「雨も上がったみたいだね」
それだけ言うと、俺はリビングから出ていくことにした。
あまり長くシャワーを浴びていると怪しまれるだろうし三島の精神の為にも早く退散してあげた方が良いだろう。
山田も三島が遊んでくれなくて拗ねてるし。
「じゃあ、僕はもう帰るから杉浦によろしくね」
部屋を出ようとすると――後ろから手を掴まれた。






