第61話 どうして『X』がここに!?
リビングのドアを開くと、三島は四つん這いになって夢中でマンチカンの猫、山田と遊んでいた。
山田は楽しそうに三島の持っている猫じゃらしにじゃれついている。
「――何か忘れ物ですか?」
扉を開く音で気が付いたのだろう。
俺が戻って来たのがあまりに早かったので、そう言いながら三島はこちらを振り返った。
そして、俺の――『X』の姿をその瞳に映す。
三島は口を開いたまま手に持っていた猫じゃらしを落とした。
絶句してしまっている三島に、初対面を装い俺は先に挨拶をする。
「あっ、杉浦のお友達? こんにちは~」
三島にも俺の正体は隠すことにした。
これから先、変に意識されるのもアイドル活動の邪魔になるだろうしな。
ようやく我に返ったような様子の三島は立ち上がって自分が着ているシャツの裾を震える手でギュッと握った。
「あっ、は、はは、初めまして! そ、そうです! 杉浦君の友達です!」」
三島は雪華さん以上の見事などもりを見せながら俺に挨拶を返した。
いつもの毒舌クールなキャラが一転……誰だお前。
顔は赤く紅潮し、緊張で頬には一筋の汗が伝っていた。
「す、すみません……こんな格好で……。は、恥ずかしいです……」
そして、しおらしく両手で顔を隠す。
何だこの可愛い美少女。
普段俺と話をしている時はそんな可愛い声出さないだろ。
やる気が微塵も感じられない正月の実家のような低い声だろ。
心の中で戦慄しつつ、鋼の精神で持ちこたえる。
正体隠して良かった……こんな状態でプロデュースなんかできるか。






