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丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
南方編

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80.お屋敷の秘密の部屋

 一通りの見回りを終えると、玄関ホールに何故かヴィクトリアが居た。


「あれ、ヴィクトリアさん?」

「ハァイ」


 ぱちりとウインク一つ。


 首を傾げるイリスの横で、ジュリアが説明してくれる。


「先程お呼びしたんです。入院施設を作るなら、治癒室のトップの意見は必須ですから」


 一体どのように呼んだのかと思ったら、屋敷の外に待機していたギルド職員に伝言を頼んだのだと言う。いつの間に。


「3階、勝手に見せてもらったけど、すごいわね。あんな設備を丸ごと使わせてくれるの?」


 ヴィクトリアの目が輝いている。


「だって、必要なんですよね?」


 イリスが頷いて小首を傾げると、ヴィクトリアが感極まった表情でイリスに抱き付いた。


「ああもう! 男前すぎるでしょー!」

「むぎゅっ!?」


 マッチョな女傑(?)にがっちりホールドされたイリスが目を白黒させる。

 ロベルトとジュリアが生温かい目になった。


「やってるよ…」

「ヴィクトリア、イリスさんが潰れます」

「あら、ごめんなさい」


 解放されたイリスは、その場でふらりと一歩後退った。


「だ、大胸筋…上腕二頭筋…」


 謎の呪文を呟いている。


《ほらイリス、しっかり》

「せ…迫り来る筋肉…」

「回復術師も身体が資本なのよ」


 ヴィクトリアは楽しそうだ。右腕に力こぶを作って笑っている。


 考えてみれば、大柄な負傷者を運んだり、暴れる患者を取り押さえたりするのだ。

 体力が無ければやっていけないのだろう。


 それにしたって、ヴィクトリアの筋肉は若干規格外だと思うが。


「それで、下見はもう終わったの?」

「ああ。1階から3階まで、一通りな」


 ロベルトが頷くと、あら? とヴィクトリアは首を傾げた。



「地下は?」



「へ?」

《地下?》


 地下──この下に、まだフロアがあると言うのだろうか。

 皆の顔に疑問が浮かび、ヴィクトリアは顎に人差し指を当てた。


「前に市長のお父様に聞いたことがあるのよ。ゲストハウスには、本当に選ばれたお客様しかお招きしない秘密の地下室があるのだ、って」

「秘密の地下室…」


 響きが不穏である。


「市長から何も聞いてないの?」

「いや…特に聞いてないな」

「私もだ」


 ロベルトだけではなく、この屋敷について市長から相談を受けていたというハドリーまで首を横に振った。


《…もしかして、市長もその地下室の事、知らないんじゃないの?》

「あり得ますね…」

「市長のお父さんは売却に大反対だった、って言ってたもんねえ…」


 当主になった途端ゲストハウスを売り払おうとする息子に、父親がそのゲストハウスの秘密を話すとは思えない。


「しっかし…秘密の地下室か。きな臭さを感じるのは俺だけか?」


 ロベルトががしがしと頭を掻いた。気持ちは大変良く分かる。


《…まあ、あんまり良い想像はできないよね》

「同感」

「ま、まだ分かりませんよ!」


 渋面を作る面々に、ジュリアが必死でフォローを入れる。


 パン、とヴィクトリアが手を打った。


「ほら、ここで考えててもしょうがないでしょ? 実物を確認してみましょ」


 とはいえ、


「地下って…どこから行くんだ?」

「見回った限りでは、階段は見付からなかったが」

「そうですね…」


 部屋は全て確認したはずだが、階段室などは無かった。

 この玄関ホールにあるのも上に続く階段だけで、地下に行くためのルートが見当たらない。


「ラズライト、魔法で探索してみたら?」

《あ、そうか》


 イリスの言葉に、ラズライトは即座に魔法を放った。


《──振動探査(エコーロケーション)


 反響する魔力が床から地面の下に広がり、すぐに手応えが返って来る。


(これは…)


 ラズライトは思わず眉間にしわを寄せた。


「どう?」

《……うん。確かにあるよ、地下》

「本当か!」


《でもさ…》


 魔法で探査した結果を頭の中で吟味しつつ、首を傾げる。


《滅茶苦茶広いよ? 『地下室』って言うより、『地下1階』って言った方が良いくらい》

「え」


 広さは、1階の全ての部屋を足し合わせたのと同じくらい。

 屋敷の建っている部分の地下に、地上の各階と同じ床面積の空間がある。


 上流階級の豪邸でも、こんなに広い地下空間を保有している屋敷は無いのではないだろうか。

 そもそも、地面を掘るくらいなら敷地内に別棟を建てる方が楽なのだ。


「予想外だな…」


 ラズライトの説明を聞いて、ハドリーが顎に手を当てた。


「それでラズライト、入り口の目星はついた?」

《うん。多分こっちに──》


 玄関ホールの両側に立つ石造りの大柱。そのうち、右側の方の裏へ回り込む。


 この柱は屋敷の上から下までを貫いていて、太さは直径2メートルを超える。

 玄関ホールが広いのでさほど違和感は無いが、屋敷全体を支える柱にしても、ちょっと大きすぎるだろう。


 その理由は、見えない部分にあった。


《この辺に扉があるはずなんだけど》


 ラズライトが柱を指し示すと、イリスが早速柱の壁面を探り始めた。

 程無く、あ、という呟きが上がる。


「これかな?」


 周囲に比べて少しだけ出っ張った石のブロック。

 イリスが押すと、ガコン、と音を立てて動いた。


 途端、そのすぐ横の石が2つ、飛び出て来る。


「ほっほーう」


 面白そうに口の端を上げたイリスが2つの石を同時に押すと、今度はもっと広い範囲のブロックが一斉に動いた。


「うおっ!?」


 丁度その目の前に立っていたロベルトが、慌てて飛び退る。


「これは…」

「隠し扉ですね…」


 最後に動いたのは、厳密にはブロックではなく、表面に薄い石を張り付けてカモフラージュされた扉だった。

 緩やかに湾曲していて、閉めると柱と一体化するため、パッと見には扉があると分からない。


「何コレ楽しい」


 イリスがワクワクした様子で扉を開け放つと、ひやりとした空気がラズライトのヒゲを震わせた。



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