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丸耳エルフとねこドラゴン  作者: 晩夏ノ空
南方編

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64.討伐班

 洞窟を脱出し、台地から降りると、オルニトミムスたちが待っていた。

 スピネルの姿は無い。恐らく、イリスを乗せて行ったのだろう。

 ヴィクトリアが次々とオルニトミムスたちに救助者を乗せ、ベルトで固定して行く。

 あっという間に移動の用意を終えると、ラズライトを振り返った。


「私とカイト、ギアは先にこの子たちを連れて街に戻るわ。ナディとラズライトは討伐班に合流してちょうだい」

《え? 一緒に行かなくて良いの?》


 驚いて見上げると、ヴィクトリアは溜息をつく。


「出発前に、討伐班の面子を確認したんだけどね。どうも遠距離攻撃の火力が足りてないの。一応、ギルド長が出張ってるみたいだけど」


 多分苦戦してるはずよ。


《でも…》


 もちろん、ラズライト自身は早くイリスと合流したい。


 しかし、意識の無い者を3人も連れて移動するのは、この南の半島ではかなり危険だ。

 だから、護衛役として途中までは一緒に行くつもりだった。


「こっちは心配するな。まだ昼だから移動のリスクも低いし、ロードランナーたちも居るからな」


 カイトがにっと笑い、ギアも無言で頷く。

 ナディを見上げると、彼女も笑顔で頷いた。


「カイトたちもこう言ってるんだし、大丈夫よ。一緒に行きましょう」

「ピルルっ!」


 行く、という言葉に反応して、ロクイチがずいっと顔を近付けて来る。

 パタパタと足踏みしているところを見ると、イリスとスピネルに置いてきぼりを喰らったのが不満だったようだ。


《ロクイチ、君が乗せてくれるの?》

「ルルっ!」


 甲高い声で応じ、即座にこちらに背を向ける。『乗れ』という合図だ。


「ふふっ。じゃあ、そっちはロクイチにお願いしましょうか」


 ヴィクトリアの言葉で、それぞれが動き出した。


 ナディがロクイチに乗り、そのナディの肩にラズライトが飛び乗る。

 他の面々もオルニトミムスたちに騎乗すると、一度、顔を見合わせて頷き合った。


《そっちは任せるよ》

「了解だ」

「そちらも、十分に気を付けて行け」

「ええ!」

「じゃあ、またギルドでね。──行くわよ!」


 号令と共に、オルニトミムスたちが一斉に走り出す。


 ヴィクトリアたちは、北──街の方へ。ラズライトとナディを乗せたロクイチは、西へ。


(手はず通りなら、この森を抜けた先に討伐班が居るはずだけど)


 真昼の日差しが、高い樹冠をすり抜けてちらちらと地上まで届く。

 とはいえ、南の半島の森は鬱蒼と茂っていて全体としては薄暗く、素人なら歩くのも一苦労だ。


 その茂みの中を、ロクイチは平然と駆け抜けた。


「すごい…!」


 半ばロクイチの首にしがみ付くように手綱を掴み、ナディが感嘆の声を上げる。


 足元の茂みは軽やかに跳び越え、頭上に張り出す枝は軽く首を竦めて躱す。

 進行方向を塞ぐ木は、先の先まで見えているかのように進路を微調整してすり抜ける。


 まるで植物の方が避けているかのような光景。


 つい昨日まで『落ちこぼれ』扱いされていたオルニトミムスとは思えない走りっぷりだ。


(ひょっとして、ロクイチって…)


 ある仮説がラズライトの頭を掠めた時、急に視界が開けた。


「ピルルルッ!」


 平原に出た瞬間、ロクイチが甲高い声で鳴く。

 同時に、ぐんとスピードが上がった。


 ──今の今まで、身体強化魔法を使っていなかったのだ。


《うそぉ!?》

「うそでしょ!?」


 図らずも、ナディと叫びが重なった。


 正面からの風圧で、目を開けていられない。

 それでも無理矢理前方を注視していると、少し向こうで大きな影が舞った。


「居たわ! あそこ!」

「ルルルっ!」


 ナディの声にロクイチが応え、さらにスピードが上がる。


 上空を舞っているのは、巨大な頭部が特徴的な大型の翼竜。

 あのケツァルコアトルスで間違い無いだろう。普通は白から明るい茶色のはずの羽毛が、薄ら青み掛かった白色になっている。


 それにしても、大きい。

 かなり上空に居るはずなのに、赤い目が怒りに燃えているのが見える。


 その視線の先には──


《イリス!》


 ラズライトが名を呼ぶと、今まさにケツァルコアトルスの氷の矢を躱した人影が、パッと顔を上げた。

 すぐさま身を翻し、こちらを手招きする。


「こっち!」


 誘導に従って、ロクイチが大木の下に駆け込む。

 その横に滑り込んだイリスは、はー…と深い溜息をついた。


「良かった、来てくれて。もうホント、どうしようかと」

《何か問題があったの?》


 まさか、誰かやられたりでもしたのだろうか。イリスに怪我は無いようだが──


「火力不足」


 イリスは仏頂面で言い切った。


「か、火力不足?」

「正確には、『あいつに攻撃を当てられる人』が居ない。ロベルトさんなんか、ゴーレムまで持ち出して来てるんだけど…ゴーレムって根本的に動き遅いよね」

《あー…》


 イリスにつられてケツァルコアトルスの居る方を見遣ると、地上をゴーレムが闊歩していた。

 走っているようだが歩いているような速度だし、腕から発射される火炎弾もことごとく躱されている。


 機敏に空を飛び回る翼竜に対して、ゴーレムでは分が悪い。

 遠距離用の攻撃手段を持っていたとしても、狙いをつける前に射程範囲外に逃げられてしまう。


「でも、他の人も居るのよね?」

「魔法使いはね。結構熟練っぽい人なんだけど…あのケツァルコアトルス、氷の壁みたいなのを自分の周りに展開してて、それに魔法をぶつけても弾かれちゃうんだよ」


 そもそも、避けるし。


《うわあ》


 人選ミスではないのか。

 一体どういう基準で討伐班を選んだのだ、あの冒険者ギルド長は。


「…正直、ケツァルコアトルスを討伐できそうな高ランクの人たちって半島の南に長期遠征しちゃってる事が多くて、基本的に捕まらないのよね…特に遠距離攻撃タイプの人は」


 私もここでの活動歴そこそこ長いけど、トップクラスの人たちの名前は知ってても顔は見た事すら無いもの。


 ナディが溜息をつく。


 冒険者ギルドのあまりの内実に、ラズライトはロベルトが居るであろう方向に少々の同情を込めた視線を投げた。


 しかし、


《で、イリス。『来てくれて良かった』って事は、何か作戦があるって事だよね?》


 イリスに向き直ると、彼女は目を輝かせて頷いた。


「そうそう。ラズライト、私に身体強化魔法掛けてくれない?」

《身体強化魔法? 掛けてどうするのさ?》



「跳ぶ」



 イリスがぐっと拳を握った。



《…………は?》



 ──何か今、おかしな発言が聞こえた気がしたが。


 ラズライトが首を傾げると、イリスはなおも真面目な顔で言い放った。


「氷の障壁は石投げたら1回割れたし、物理攻撃は効くっぽいんだよね。だから、跳んで障壁砕いて、ついでにあいつの頭ぶん殴って来る」


 瞬間的にだったら、動き止まると思うし。




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